父が緩和ケア病棟に移って、ついに1か月を過ぎてしまった。
父の状態も気がかりではあるのだけど、
もっと気がかりなのは・・・
「一体いつまでここに居られるのだろう?」
ということ。
「緩和ケア病棟」というと、ホスピスをイメージする人が大半だと思う。
けれど、このブログの中でもたびたび触れて来たけれど、
今の緩和ケア病棟は死ぬまでいられるところではなくなっている・・・
という実情があるらしい。
簡単に言うと、病院側の収入の基準となる「診療報酬」が
その病院の緩和ケア病棟に入院している患者全体の平均入院日数が
30日を超えると減額された診療報酬が適用されてしまう・・・
という、今現在、家族の中にガン患者がいないとピンとこないかもしれない
ちょっと複雑な事情があるためだ。
※ガンはどの人にもどの家族にも起こりうる&緩和ケア病棟を検討する日も当然くるかもしれないので、知っておきたいという方はこちらのリンク先の記事をどうぞ。
実際、父を緩和ケア病棟に入れてもらう際の面談の席でも、
緩和ケア病棟のセンター長さんは、何度も何度も
「ここは半年、1年といられるわけではないので・・・そこはご理解くださいね。」
と繰り返した。
父のガンの進行自体は、おそらく検査した限りの画像で見る限りは
そこまで致命的な状況ではない。
(ただし肺の検査しかしていないので他臓器への転移があるかどうか?は不明のまま)
センター長さんが「半年も一年も・・・」という言葉を繰り返したのは
検査結果を見る限りは、
余命1~2か月ということはなさそう
↓
それなのに緩和ケアへ来る
↓
しかも高齢者(←介護施設と同じと思われると困りますよ)
↓
「半年以上の長期入院はなどはちょっと無理ですからね」
とこんな感じで、や~んわりけん制するためのものだったと思う。
そんなわけで・・・・緩和ケア病棟へ移れたことでホっとできたのは実は一瞬で、
2週間も経つころには、「退院勧奨されたらどうしたらいいんだろう?」と
安堵の一方で常に不安が付きまとう形になった。
そして、入院する前には予測していなかった複雑な思いに駆られるようにもなった。
頭の中が「30日以内」でいっぱいになると、
「それまでにもっと悪化してくれないと困る」という
妙な焦りが出てきてしまうことが何度かあった。
もっと直接的に言えば「1か月以内に亡くならなかったらどうしよう?」
というような心理状態に追い込まれたり。
普通、入院生活というのは「日に日に良くなっていくことを喜ぶべき」なのに
そんな心理状態なるとは想像もしていなかった。
緩和ケア病棟はとてもいい場所なのに、それなのに苦しい・・・となること。
正直、こんなことを考えてしまうのなら
ここの病院の緩和ケア病棟へのこだわりを捨てて、
1か月という「縛り」のない療養病院へ思い切って転院したほうが・・・
少なくとも「退院しなければいけないというプレッシャー」は感じなくてよかったかも
と、後悔した日も何度もあった。
・・・というか、その後悔は今も少しはある。
それは、いっそ「療養病院」だったほうが、
前記事に書いたような「看護師さんたちからの善意の重圧」を
感じることもなかっただろうな・・・と思うから。
療養病院の看護師さん達に全面的に
「お願いします」でいられたかもしれないなあ・・・と思ったりしたから。
(朝晩2度通うということもせずに済んだかも・・・と)
実は父の入院後、2週間くらい経ったときにこれらの負の感情がピークだった。
今はいろいろ気持ちの折り合いをつけて、
「なるようになる。退院を言われたらそのとき考えよう」と
自分に言い聞かせられるようになったけれど。
このころ、一旦退院を勧められたときにそなえて、
ケアマネさん&相談員Sさん、そして訪問看護センターの師長さんと相談して
決めてあった暫定的な対応策は
「30日経ったら、8日間だけ退院して(継続入院日数をリセットするため)
また次の1か月入院させてもらう」
・・・というものだった。
ところが、先日のこと。
わたしがいわゆる「30日ルール」を心配しているということを
どこからか耳に入れた緩和ケアの看護師さんが
いろいろと有益な情報を教えてくださった。
・・・というか、
「そんなこと心配している家族さんは初めてですよ!」
と、少し笑われてしまったけど。
(30日ルールのことなんて、普通の患者家族は知らない・・・と)
彼女から聞かされたことは、ここの緩和ケア病棟の他の患者さんの利用状況だったり
退院に関して、病院側がどういうスタンスで稼動しているかなど。
入院期間というのは、ケースバイケースなので、
病状によっては、1か月以上入院する患者さんも当然いると教えられた。
そして、父についてはわたしが
「自宅でショートステイを利用しながら頑張ろうとも思ったのですが、麻薬を自分で管理できないことがネックで受け入れてもらえるところがなくて」
とこぼすと、
「ああやっぱり・・・。そうかもしれませんね。」と納得してくれた上で
「ひとり暮らしで退院しても行き場のない人を追い出すようなことは絶対にないですよ。」
と、わたしを安心させるようなことを言って下さった。
もうこれがどれほど救いの言葉に聞こえたことか。
もちろん、看護師さん目線での「たぶん」の話なので、そうなるとは限らないけど
こうして1か月を過ぎた今も、退院を勧める話はとりあえず来ないので
(本当に一か月で退院なら、3週間経った時点くらいで打診があるはずだろうし)
ここは、こちらから尋ねてヤブ蛇にならないように、
特にこちらから主治医に何か尋ねることもなく・・・
しずか~に、粛々と朝晩の付き添い介助に通い続けている。
ちなみに、父が入院するときに既に入院していた患者さんが最低2人はいる。
なので、父一人が1か月以上入院しているわけではないのは確か。
そして、そのうちのおひとりの病室が2日ほど前から少しざわついている。
付き添いの家族がこのごろ泊まり込みや、深夜に面会にきたりしているので
(面会記録を見ると時間がわかってしまう)
もしかしたら最期が近いのかもしれない・・・。
素人の推測として・・・
緩和ケア病棟は決して「末期がん患者だけ」を対象にしているわけではないので
体調が悪いときのケアのための短期入院だったりも当然あるのだろう。
(たまに病棟を散歩している患者さんを見かけたり、毎朝自主的に手すりにつかまってリハビリしている患者さんも見かける。そういう人たちはどう見ても父よりずっと元気そうに見えるし、自主的にリハビリをしているということは自宅に帰るつもりでがんばっているんだろうなあ・・・と思ったり)
または本当に状態が悪く・・・
入院して1週間とか短期で亡くなる方も中にはおそらく
いらっしゃるだろうと考えると、
たまに父のように「1か月を超える」患者がいても、
病棟全体として「患者の平均入院日数30日未満に抑える」を
という状態は結果的に維持できているのかもしれない。
まあ、そこまで踏み込んだことはさすがに看護師さんにも聞けなかったけれど。
父について、退院の話が今のところ来ないということは・・・
それはつまり、父の衰弱が進んでいて(見た目にも明らか)
もう週単位の段階に入ったと評価されているのかもしれない。
そう考えると複雑な思いになる・・・。
緩和ケア病棟は外から想像していた景色と、内側から見えるものはずいぶんと違う。
看護師さん一人当たりの受け持ち患者数が少ないので
ケア自体はもちろん、とても行き届いている。
だから患者にとって穏やかでいられる場所であることは間違いないだろう。
一方で、家族にとってはいくつもの複雑な思いにさらされる場所かもしれない。
それでも、患者本人と家族・・・どちらの安息を重視するかといったら
やはり本人が大切にされていることが一番大事なので
家族であるわたしは、湧き上がるいろんな感情に振り回されないように
今の環境に順応して、落ち着いていなければと思う。