介護認定調査の難しさ(後編)

「認定調査のときにできるだけ弱々しく」だなんて

ふざけたことを書いたが、実際のところは、

あとから提出されるであろう「主治医の意見書」と

こちらが調査で答えた回答を照らし合わせて審査されるので、

私たちが答えたことと、主治医の診断とあまりに乖離があると、ウソがばれてしまう。

 

介護申請をする理由やきっかけは人それぞれ、さまざま。

特に病気で通院をしているわけではないけれど、介護申請のために

病院で診察を受け、主治医に意見書を書いてもらう・・・というケースもあるらしい。

そういう場合の意見書は、あまり大きなインパクトはないかもしれないが、

現在の父のように入院状態にあったり、明らかに病気をきっかけに申請する場合、

主治医の意見は、今現在の状態を詳細に示す根拠資料としてより説得力もあるはず。

なので、できるだけ弱々しく~などと言っても、

大変そうに見せるにも限度があるのだ(汗)

(※もちろん、今回の調査でウソは一つも言っていない)

 

ちなみに、父が在宅酸素を使うことが決まったときに、支援センターのSさんに

「在宅酸素だから、判定はきっと重めにでますよね?」

とわたしは期待を込めて聞いたのだが、Sさんの反応は違っていた。

 

「それがね~~。あんまり関係ないのよ。介護認定の疑問点というか・・・

在宅酸素があることで家事ができてしまうなら、「できる」とみなされちゃうのよ。

車椅子でも同じなのよ。車椅子を使って家事ができるならこれも「できる」って

判定されちゃうの。現行の制度ではそういう判定が多いの。

(それが現状の認識だから)仕方ないんだけど、本当はおかしな話よね~?」

と。

これには驚いた。本当におかしな話である。

在宅酸素を使うと、呼吸器機能障害者として認定されるらしく、「障害者手帳」の

申請ができる。もちろん、父に関しても主治医から申請するように説明されている

ので、書類がそろい次第申請する予定である。

つまり父は社会的には障害者になるのである。

障害者手帳を携帯することによって、さまざまな助成を受けられることも

この週末にいろいろ勉強した。 

プライドの高い父本人は「障害者手帳を持つ」ことに抵抗があるように見えるが、

わたしは、新幹線の運賃が半額になったり、タクシーが1割引きになったり、

いろいろな場所への入場料が割引になったり・・・とかなりメリットが多いので

あまり深く考えず、割り切ってそういった助成を十分活用したらいいと思っている。

 

しかし、在宅酸素を使うことによって、日常生活がなんとかなってしまうと

介護保険の制度上では「困ってないでしょ」ということで

介護度が低めに出てしまうのだという。本当に謎すぎる。

もちろん、重症患者の場合は酸素を吸っていても動作が厳しいだろうから介護度高めに

でるのだろうが・・・。

 

ネットでさまざまな介護経験者の話を読んでいると、認知症でも同じようなことが

起きる傾向にあるみたいだった。

認知症が進んで家族はとても大変なのに、

それ以外には病気もなく、身体機能のほうには不自由がない場合も同様に

介護度が低めに出てしまう・・・というケース。

こういうことはその家族と要介護者が困っていること、抱えている問題も違うので、

その立場になってみないとわからないけれど

きっとどの家族もそれぞれに思うところはあるだろうなあと感じる。

 

こういう話と、父の実際の認定調査の流れを見ていると、父の介護度を左右するのは

もはや「主治医の意見書」であるような気がしてきた(あくまで父の場合の話)。

主治医が父の持病(肺気腫間質性肺炎・肺線維症)、今回の入院、

そして在宅酸素について、果たしてどのように記述してくれるのか・・・?

(先生、お願いです。補助が必要だと思われる感じでお願いします・・・)

  

こうして、病室での認定調査はすべての質問が終わると、

「これで質問は終わりです」と調査員さんは父に向って告げた後

「ちょっと外でお話聞かせてもらえますか?」と、

わたしだけが、病室の外に呼ばれた。

 

その目的は、「本人の前では言いにくいでしょうが、認知能力はどうだ?」

という、家族と調査員の内緒の話をするためで、これも認定調査の定番らしい。

ここでもウソをついてもしょうがないので正直に言った。

物忘れはかなり激しい。

が、今のところ生活に支障をきたすような物忘れはないはず。。。、と。

実は入院中に

「明日は先生が朝、診察に来ると言っていたから、お前も来てほしい」

と前夜にLINEで言われたことがあった。その日は先生の外来の曜日だったので、

「外来の日だから、忙しいのに朝から病室に来るわけはないよ。きっと勘違いだよ」

と、わたしは疑問に感じて父に言ったのだが、

「いいや、確かに先生がそう言った。看護師もそう言った。」と

頑固に譲らなかったことがあった。

 

わたしは連日の病院通いで疲れていたのもあって、「朝一番で来てくれ」には

うんざりな気分だったが、父が「先生が来るから」としつこいので

渋々その日、朝8時に病室へ着くように出かけていった。

外来で診察のあるはずの先生が「朝、病室へ来る」といったら、

そのくらい早い時間なのだろうと思ったから仕方なく。

 

しかし、思った通り先生は来なかった。

 

父が納得しないので、念のため看護師さんにも聞いた。

「父がそう言ってるのですが、何か特別な話でもあるのでしょうか?」と。

もちろん看護師さんは「そういう話は先生から聞いていませんが・・・」と言った。

 

「きっとお父さんの勘違いだったんだよ」と

わたしがやんわりと言うと、自分が間違っているかのような物言いを嫌う父は

「いいや確かに言った。10時半くらいに途中で抜けてくるんじゃないか?」

と、不機嫌そうに言って、絶対に勘違いを認めなかった。

 

(よほど緊急でもなければ、予約患者を待たせてまで、

回復期で状態の安定している父の病室に、外来の途中で抜けて来るなんてこと、

あるわけがないじゃないか!)

 

と思ったが、強く言うと父がキレると思ったので

それ以上反論せずにおいた。

 

そのことを調査員さんに話すと、

「そういうときは、娘さんはどんなふうに対応するのですか?」など

意外にも詳しく聞き、いちいちメモを取っていた。 

 

認知能力について話していたら、以前の入院のときのことを思い出したので

「2月にも入院したのですが、そのときは入院中にハッキリとせん妄の症状が出て

看護師さんにも知らせて、注意を払ってもらったことがあります。」と、

そのときの話もした。

ちなみに、この時の「せん妄騒動」は看護師さんのほうでも記録してくれているそうで

すべてが”証拠”として残っている。

 

norako-hideaway.hatenablog.com

 

 すると、「2月にも入院されてるんですか?」と驚いたようにこれもメモしてくれた。

そんな前のことも、判断の材料になるのだろうか???

もちろん、せん妄の症状についても書き留めていた。

せん妄については、あくまで一時的なものだったから、直接の判断材料には入らない

気はするけれど・・・それはわたしが判断することではないので、おまかせした。

 

こうして、廊下での内密の面談まで含めると40分くらいかかったのだろうか?

「このあと、看護師さんからも話を聞かせてもらいます」

と調査員さんは言ってたが、いったいどんなことを聞いたのだろう?

少し気になっている。

 

とりあえず、介護申請のためにやるべきことはやったので、

あとは結果が郵送されてくるのを待つのみだ。

 

この結果の通知というのは、原則は要介護者(父)のところへ

1か月くらい後に書留で届くという。

しかし、介護申請の手順やルールすら、理解できていない父に

そのことを説明しても理解力と記憶力が怪しくて覚えられないことはわかっていたので

もう説明すること自体がめんどくさいな・・・と思い

(今理解しても、たぶん届くころには忘れているのでもう一度説明することになる)

「通知書」は最初からわたしのほうへ郵送してもらうことにしておいた。

 

父は認知症ではないと前置きしつつも、わたしはこうして随所で

「ああ、こんなこと父は理解できないし。これは無理」と父に与える情報を

わたしの手元でいったん検閲して、ふるいにかけているわけで・・・。

それって、父の理解力や判断力が相当に劣化しているってことなんだよなあ・・・と

少し複雑な気持ちになった。

 

この先は、「認定を受ける前に介護サービスを利用させてもらうか?」

考えなければいけないのだが、ここに「中途半端に元気になってきた父本人」

大きな障害となって立ちはだかるのだった。

 

その話はまた次回。