仕事人間の夫に訪れた危機(2)

前回からの続き。

 

整形外科で圧迫骨折と診断されてオーダーメイドの医療用コルセットを作成した夫。

基本的にはコルセットが完成するまでは「絶対安静」を言い渡されていて

家でひたすらゴロゴロ寝ている日々。

 

おそらくわたしだったら、突然自分の身に降りかかった「絶対安静」を

なんだかんだと楽しんでしまうだろうと思う。

事実、腰の手術をしたときはそうだった。

もちろん、痛みはあって辛いけれど、当時、仕事を堂々と2か月休めたのは

自分の中で「これ以上ない休暇」だった。

なので、日ごろ月に2~3日しか休日のない生活を送っている夫にとってみたら

「いい休暇」・・・になるのだろうとわたしは思っていたのだ。

 

が、それは全く違っていた。

夫は元来のせっかちな性格もあるのか、毎日毎日

「今日は仕事にいけるんじゃないかな。行けそうな気がする」と言った。

コルセットがないのだから無理だと説得したけれど

それでも「行く」と言ってきかないので、まあ好きにさせてみよう・・・と思って

骨折から5日くらい経ったときに、一度会社へ行かせてみたら、

わずか1時間で帰ってきた。

痛くて痛くて座っていられないのだと。そりゃそうだろう。

自分で試してみて、仕事にならないことが身に染みたらしい。

 

その後ようやくコルセットが完成して整形外科に取りに行くと、

またまたその足で「仕事に行ってみる」と言い出したので、

行かせたがそのときも2時間くらいでヨレヨレになって帰ってきた(笑)

 

(ちなみに、夫の職場は自宅から徒歩5分なので、送迎は必要なく自分で歩いていく)

 

今度は、「コルセットがあれば仕事に行けると思っていたのに行けなかった」

ことで大きなため息とともに凹み始めた。

 

まあ気持ちはわかるけれど、その時点でまだケガから1週間だ。

骨折してるんだから、無理だってば・・・・と冷静に思ったものの、

夫は日に日に顔から表情が消えて行って、あまり笑わなくなってしまった。

もともと喜怒哀楽少なく、口数も少ないタイプの人だけれど、普段以上に

なんだか朝起きてきた瞬間から、夫に漂う空気がどよーんとしていて、

時折、

「オレ、本当に治るんだろうか?」

「もうこのまま仕事できなくなったらどうしよう」

「社会から取り残されて行ってる気がする」

など、今まで聞いたことのないようなネガティブな感情を吐き出すようになった。

 

結婚して・・・いや、結婚前からの付き合いを含めたら30年以上夫を見ているけれど

こんな弱気な夫を見るのは初めてのことで本当に驚いたし戸惑った。

 

世の中、仕事や職場が原因で心を病む人は多い。

けれど、夫の場合はその逆で、「仕事を取り上げられて落ち込んでいる」のだった。

無趣味だし、家事はしないし、そのわりに仕事だけは真面目な働き者・・・とは

確かに昔から思っていたけれど、まさかこれほどまでとは思わなかった。

 

仕事が好き・・・というより、夫は仕事をする自分に価値を見出しているのかな、

おそらく仕事こそが夫のアイデンティティだったんだな・・・と

そんなふうにわたしには見えた。仕事に誇りを持っていると思うし、

会社を回しているという意識が高かったのだと思う。

 

そんなこんなあって・・・それでも薄皮を剥ぐように少しずつ少しずつ

腰の痛みは和らいでいったようで・・・

結局、仕事は2週間休んで自宅療養を徹底した後、

ようやく仕事復帰することになった。

 

といっても、座っている姿勢がとにかく激痛ということで

最初のうちは午前中のみの勤務。

それも、仕事の合間には職場の応接用ソファで横になって休憩しながらだった。

 

それからまた1週間くらい経つと15時くらいまで働けるようになり

それがまた1週間で16時になり、17時になり・・・・と、

少しずつ働ける時間が延びていき、

骨折から2か月経った今週になって、ようやく18時まで仕事してくるようになった。

 

今回の怪我療養・・・・すごく幸いしたのは職場環境だたっと思う。

義兄が社長の親族経営の会社なので、夫には「上司」ってものがいないし

義兄とは仲がいいし、社員はみんな和気あいあい。

あまり細かい社内規定がないのでなんでも口頭で済む環境。

仕事の途中でソファで横になるのも、「今日はもう帰るわ」と昼で帰る・・・とか

自分の体調次第で好きに勤務時間を調整できたのは大きかったと思う。

これがちゃんとした会社(という言い方も変だけど)だったら

その都度、きちんと届を出したり連絡したり、手続きとか面倒だったろうなあと。

 

まだコルセットは外れていないし、車の運転の許可も出ていないので

1日ずっと内勤だけの仕事ではあるものの、

「仕事ができない」というストレスから解放されて、

夫のメンタルもすっかり元気になった。

 

わたしも胸をなでおろしているけれど、怪我でこんな状態になってしまうなら

将来大きな病気などで働けなくなったらどうなっちゃうんだろう?と

少し心配にも。

 

まあ、そうならないように・・・・

少しでも健康に気を配った生活をしてほしいところだけど、

それはそれでなかなか難しい。

だって結局「健康管理」って自分の問題だから、

誰かがコントロールできることじゃないものね。

 

そんなわけで、この2か月結構大変なことが起きていましたという話でした。