仕事人間の夫に訪れた危機(1)

実はかれこれ2か月前にさかのぼる話なのだけど、

おそらく夫の人生の中で一番のピンチであろう出来事があった。

 

5月下旬の週末のこと。朝から1日仕事の予定だったはずの夫が

11時くらい、突然帰宅してきた。

予定よりずっと早い帰宅に驚いたのだけど、「ぎっくり腰やっちまった」と言う。

 

わたしは腰の手術をする前は年に2~3回はぎっくり腰をやる、

ぎっくり腰のプロといってもいい身体だったけれど

夫が「ぎっくり腰」と言ったのは数十年の付き合いの中で初めてのことだ。

しかも、激痛らしく仕事は続けられなくて即帰宅してきたという。

痛みに耐えながら自分で車まで運転してきた(無謀にもほどがある)

 

ぎっくり腰初体験の夫は、かなり甘く考えて「1日寝ていれば治るだろう」

だなんて甘いことを言っていて、わたしや義兄の「医者へ行け」の言葉を無視したが

3日目になって痛みはむしろ悪化していくことに

さすがに限界を感じたか「やっぱり医者に行く」とついに行く決心をした。

 

腰に注射の一本でも打ってもらって、楽になって帰宅してくるつもりだった夫。

しかし、なんと整形外科の先生からの言葉は

 

「ぎっくり腰どころじゃないですよ。折れてます。圧迫骨折ですよ。」

 

という驚きの診断結果だった。

そりゃ痛いはずだし、時間が経つほど痛みが増すのも当然・・・ってことだった。

 

その場でコルセットの型どりをして帰宅。

コルセットが出来上がるまでの1週間は、出来る限り安静で・・・という指示。

 

圧迫骨折、高齢者やひとりでトイレに行けない重症のケースは入院になるそうだけど

夫の場合はとりあえずトイレやお風呂はひとりで大丈夫だったので自宅療養になった。

 

夫の職場は普段、週休1日。しかも日曜日も仕事になる事が多いので

実際には夫は月に2~3日しか休まない生活だった。

それが本人にとっても、わたしにとっても当たり前の生活リズムだった。

その夫が突然、動けなくなって休養を余儀なくされる生活に・・・!

 

当時の夫、まず座っていることができない。腰を曲げる姿勢が激痛らしく、

朝、起きてくるとそれから夜寝る時間になるまで夫は1日12~3時間くらいを

ひたすらリビングのソファで横になってテレビやアニメを見て過ごした。

そりゃ、寝ているしかないのでテレビしか暇つぶしがないのはしょうがない。

 

わたしは・・・というと、

当初「毎日毎日夫が家にいる生活はストレスフルに違いない」と

ちょっと憂鬱に思っていたけれど、

そこは夫に気を遣いまくってもしょうがないので、自分はリビング隣の和室で

自分の好きなことをして過ごそう・・・と開き直ってみたら

意外と夫の存在は気にならずに済んだ。

普段、昼間家にひとりでいるときはテレビは一切つけないので、

1日中、ずっと大音量でテレビやアニメの音声が聞こえ続けていることだけが

ちょっとうるさくて苦痛だったけれど、夫がいるから疲れる・・・

みたいなことは意外となかった(自分でも驚いている)

 

朝昼晩・・・と一緒にご飯を食べ、起き上がるのも激痛の寝たきり夫に

お茶を運んで、コーヒーを運んで、食事を運んで、

なるべく寝たまま食べられるおかずを考え、ズボンを履かせて

靴下をはかせて(←腰が曲がらない)、足の爪を切り・・・

 

「なんかさ、ほぼ介護だよね?これ」

 

と笑ったら、それがツボだったらしく夫も笑いが止まらなくなり

「やめてくれ、笑うと痛いんだからやめてくれ」

と言って、二人で笑いあった。

 

ストレスどころか、動けなくなった夫との生活は意外と面白かった。

 

長くなりそうなので、一旦ここまで。