予想のずっと斜め上。

父が亡くなった後のモロモロな手続きについては

兄弟が・・・・特に兄が中心になって進めてくれていることは以前書いた通り。

 

その時の記事の中でも「適材適所」という言葉を使ったけれど

日を追うごとに、兄のそのまとめっぷりのすごさに驚かされている。

 

いわゆる「遺産相続」についても着々と進んでいるのだけど

実のところ、父はそんなに財産があったわけではない。

介護サービスの自己負担額が3割だったことからもわかるとおり、

年金は一般的なそれよりも多めだったと思うけれど

(これは厚生年金に加えて企業年金を受け取っていたため)

一方で、定年後に退職金をドカンと株につぎ込んだり

(ITバブルがはじけてかなりの損を出しました・・・)

だいたい年に2回くらいは海外旅行へ行きまくっていたり

欲しいと思ったものは、衝動買いのようにバンバン買ったり・・・・と

好き放題お金を使っていたのも事実。

だからそんなにお金が残っているわけではない。

 

とはいえ、子供の立場からすると、

「借金もなく、年金だけで親の生活や介護サービスすべて賄えるだけで十分ラッキー」

くらいなことが本音だったし、実際そうだったのでありがたいことだった。

 

その上で残った貯金や株の遺産分割について

兄が着々と進めてくれているのだけど

先日、わたしと兄だけで会話しているときに

 

「お前が一番多くもらうべきだし、僕は正直、もらなくてもいい。」

 

と思いもよらないことを言いだした。

幸いなことに、うちは私も含めて兄弟3人みな、お金に対してがめつくない。

だからなんというか、自然と「譲り合い」みたくなっていて

わたしは当然

「そんなふうに気を使わなくていい。3人同じにしてくれたらいいから。」

と兄には言った。

父の介護や看護を頑張ったのは確かにわたしだと思うけれど、

兄と弟は父が亡くなった後の手続きや実家の片づけなどを定期的に帰ってきては

頑張ってくれているので

わたしの中ではもうすでに「負担はイーブン」という気持ちでいる。

それに加えて・・・

何しろ兄は、今年の春に仕事を早期リタイアした身。

当然、それなりの資産を貯めて辞めたであろうとは思うものの、

やはり50代で無職って、心配な気持ちもある。

驚いたのは、その次に兄から出てきた言葉。

 

「僕のお金の心配はしなくていいから。今だから言うけど、辞める前に自分の老後資金のほかに、お父さんの介護費用として月30万円×5年分用意してたからね。そのくらいあれば大丈夫かと思って。でも結果的にそれは必要ないまま終わっちゃったから・・・そんなこともあって、お金のことは大丈夫なんだ。」

 

もう口あんぐり・・・だった。

会社を早期退職すると決めたのは10年くらい前だったと言う兄。

その時点ではまだ、父は健康だったし

老後がどういう形になるか?は全く想像できなかった。

 

そのわからない状況の中で、

自分のリタイア後の資金+父の介護費用5年分・・・を、

リタイアするための目標額にしていたというのだ。驚き以外の何物でもない。

 

よく40代くらいの人が

「老後資金これだけ貯めました」と言ってるのをブログで見たりもするけれど、

そこに「親の介護費用」まで上乗せしている人がどのくらいいるだろうか???

それを兄は用意していたというのだ。

おそらく施設の費用を出すつもりで貯めていたという意味だと思うけれど

実際には父は施設に入ることはなかったし、

介護費用や入院費は父の年金で賄えたために

兄が準備していたというお金は手を付けないままに看取りが終わったことになる。

だから「自分はお金には困っていないから要らない」と兄は言ったのだ。

そういう経緯で、遺産はわたしに多めに、

そして残りを弟に・・・という提案をしてきたわけだった。

 

兄の用意周到さは、それだけじゃなかった。

弟に渡す遺産のことを

 

「今のあいつじゃなくて、60歳のあいつにやろうと思っている。」

 

と、意味深な言い方をした。

60歳の弟に遺産を渡す?それどういう意味?とわたしが聞くと・・・

 

兄は、過去に職を転々として、今は個人事業主として働いている弟のことを

将来もらう年金がほぼ国民年金しかないことを気にかけていて

「あいつに遺産を上乗せしてやる代わりに、

そのお金をそっくりそのままiDeCoの積立資金にさせようと思って。」

 

という驚きの提案だった。

 

 

幸いなことに、今は弟の仕事は順調で収入も安定しているらしい。

定年のない仕事なので、身体さえ健康であればいつまででも働ける。

しかしその健康が60歳以降も約束されるとは限らない。

だから遺産分割をしたら、そのお金は将来のためにとっておくんだよ、と

よけいなアドバイスをしようと思ったいたくらい、

わたしも弟の老後のお金については心配していた。

 

もちろん、兄の提案には大賛成。

弟も、当然喜んで提案を受け入れると思う。

父親のお金を老後資金の足しにできるだけでなく、

全額所得控除が使えるから税金減らせるし。

いいことだらけだ。

 

それにしても兄の綿密さには驚かされるばかり。

ボーっとしているようでいて、

よくぞそこまで頭が回るなあ・・・と感心しきり。

 

そして、何より喜ばしいのは

やはり兄弟がお互いを気遣う心を持っているということ。

 

おそらく来年・・・実家がなくなってしまったあとはどうなるか・・・?

想像がつかないけれど

 

なんだかんだとつながっていられるといいなと願っている。