いきなりの洗礼。

(※今日は、お食事中の方はご注意ください~~~な内容があります)

 

金曜日に退院した父。

わたしひとりで連れて帰るのは

間違いなく大変だったに違いないほど弱々しかった父を、

週明け月曜日までの3泊・・・

東京から助っ人として来てくれた兄に頼んでいた。

 

実は、本当は週明けまで丸投げしたかったのだけど、

ヘルパーさんの事業所長さんから、

新しくお願いする「昼ご飯サポート」について、

具体的にどんなことをこちらが希望しているか?についての

打ち合わせをしたいとの連絡があり

日曜日の午前中に父宅で会うことになっていたため、

わたしは結局、週末まるごと休む・・・というわけにはいかなかった。

(こればっかりは何もわからない兄に頼むわけにもいかないし)

 

そして待ち合わせの時間よりも少し早めの午前10時に実家に着くと

何やら家の中の様子がおかしい。

兄にどうしたのか?と尋ねると・・・

 

なあんと・・・父が便を漏らしたという・・・・(汗)

 

自宅に帰ってからも、排尿については・・・足取りこそ弱々しいものの、

なんとか一人でトイレへ行けていると兄から報告も受けていた。

 

その父が便については失敗したという、

在宅介護で一番の懸念材料だった排泄問題にいきなり直面することになるとは・・・。

 

よくよく話を聞くと、どうやらもよおした時に、

一応自分でちゃんとトイレに行ったのだけど、まずそこで失敗。

(どういう状況かよくわからないけれどパジャマのズボンも汚したらしい)

 

それで、兄がトイレの中で紙パンツを新しいものに替えさせて、

ズボンも替えてくれたようで父はベッドまで戻って来たのだけど、

どうやらまだ便を出し切っていなかったようで・・・

残り便をさらに履き替えたばかりの紙パンツの中に漏らしてしまったらしい。

 

ホントに、退院後も紙パンツ継続にしておいたことは、不幸中の幸いだった。

(そしてもう絶対に布パンツには戻れない・・・)

 

 

そこからが大変だった。

何しろわたしも兄も、介護ド素人。

いきなり「在宅介護の洗礼」を受けた気分だった。

 

 

たぶん、介護士さんや看護師さんなら、ハイハイ・・・とばかりに、

手際よくさっさとお尻をきれいにして紙パンツも取り替えてくれるのだろう。

ところが2人そろって、どう動くのが一番いいのかよくわからない。

わたしは「おしりふき(大人のおむつ用)で拭けばいいんじゃないの?」と言うも、

紙パンツの中を覗いて状況を確認した兄は

「うーん、かなりの量がついてるから、おしりふきで拭く前に
ウォシュレットで洗うほうがいいと思う」

と言うので、わたしも

「なるほどトイレまで歩けるならそのほうがきれいになるよなあ」・・・と思い

父にもう一度トイレに行くように促すのだけど

父は体力を使い切ってしまったようで、呼びかけも無視して応じない。

低姿勢で何度も頼むが「イヤだ」と動かない。

ベッド上にあおむけに横たわって天井を見つめるだけで動かない父。

たぶん、あのときは本当に起き上がる体力がなかったのだと思う。

 

動けないのならしょうがない・・・と、ベッドの上で拭かせてくれ・・・というと

それもかたくなに拒否。

「あとでまたトイレに行くからいい(怒)」と、キレはじめる。

 

たぶん、羞恥心もあって、ごまかそうとしたのかもしれない。

(あとでもう一度トイレへ行ったときに拭きなおせばいいや、と)

けれど、部屋の中に充満する悪臭からしても、漏らし方が少量でないのは明らか。

 

 

説得を続けて・・・・

最終的に、父はようやく歩行器につかまってもう一度トイレへ戻り

ウォシュレットを使って洗浄→兄が大人用おしりふきで拭く→洗浄→拭く

・・・という作業を何度も繰り返して、また新しい紙パンツに履き替えて

この一連の作業は終了した。

 

しかし、お漏らしが分かったときから、お尻の洗浄が終わるまで、

なんと45分もかかった・・・・。

ベッド上でお尻を拭くことを拒否する父をなんとかトイレへ誘導するだけで30分、

トイレに座ってお尻をきれいにするのに15分・・・。

 

わたしと兄の気持ちが、この件のあとハッキリ一致した。

 

私「こんな状態では、ひとり暮らしなんて無理だよね・・・」

兄「絶対無理だ。無理無理。」 

 

 しかも悪いことに、どうやら父は1か月過ごした病院から自宅に戻ってきて

せん妄状態が良くなるどころか逆に悪化してしまい、

完全に認知症のような状態になっていた。

(ある意味、この便漏れはせん妄悪化の影響かもしれないけど)

 

薬が飲めないどころの話ではなかった。

 

2日間父の世話をしていた兄によると、

「介護ベッドのリモコンの使い方が分からなくなった」(※病院では操作していた)

「テレビのリモコンの操作が分からなくなってしまった」

「布団を自分でかぶるなど自分で判断できない」(寒いから布団をかぶるとかがない)

「部屋の電気を自分の判断で付けたり消したりできない」(部屋の照明のON,OFFのリモコンが操作できない)

「昼か夜かもわからない、日付が全くわからない」

そしてついには

 

「自分が今どこにいるかわかっていない」

 

 という状況になってしまっていた。

あれほど家に帰りたいと言っていたから、「これが最後」と思って頑張って

家に帰れるように環境を整えたのに、いまの父は自分がその自宅にいるということが

わからなくなってしまっているという、悲しい現実。

 

この2日間でせん妄状態が悪化していた。

 

過去の入院時のせん妄では、

一時的に明らかに異常な言動をすることは何度かあったけれど

それはどちらというと「妄想」が多かった。

 

今回のように「リモコン操作がわからなくなる」とか

「自分がいる場所」がわからなくなるようなことはなかっただけに、深刻だ。

 

 

わたしが話しかけることに対しても

まったくとんちんかんな返答が戻ってくる。会話がかみ合わない。

その場にはいない、「弟」のことを「ちょっと呼んできてくれ」と言い出したり、

 

 

最後にはこの日、わたしが「じゃあわたしもう帰るからね。」と父に言うと

父はどういうわけか、兄の方に向かって

「すいません。色々お世話かけました。ありがとうございました。」

と頭を下げてお礼を言う始末(しかも兄には絶対言わないはずの丁寧語)。

(一体誰と話しているつもりだったのか・・・?)

 

これが、高齢者特有のせん妄(今回は退院でまた環境が変わったことが理由)

なのか?ガンの進行によるせん妄なのか?

 その原因はわからない。

 

退院で環境がまた変わったことが理由であれば、

数日のうちに落ち着いて来る可能性もあるので、

来週の診察日まで、とりあえず経過を見守ろうと思っている。

 

なので、今更

わたし自身、父の状態についてオロオロしている・・・ということはあまりなく・・・

 

それよりも「自分で判断できない・新しく教えたことを記憶できない」父が

安全に暮らせるようにするには、どうしたらいいか?

冷静に考えること、行動すること。

しかも、わたしが続けられる負担であるかどうかの見極め。

その部分だけに集中しなければ・・・という気持ち。

 

 

さあ、どうする?わたし?

 

そしてこのあと、ヘルパーさんが打ち合わせにやってきた。