試される家族。

昨日の弱気な記事に、たくさんの・・・本当にたくさんの

励ましのコメントをいただき、ありがとうございました。

いつも多くの方から見守っていただいていたんだなあと、

胸が熱くなりました。

正直、まだ完全に吹っ切ったわけではなく

これからも続く父の看護・介護の中で

きっと何度も何度もわたしは葛藤すると思います。

そのたびに、みなさんからいただいたコメントを読み直して

「自分は間違ってない」と喝を入れていこうと思います。

 

どんな状況になろうとも、できるだけうろたえず

自分を信じて進んでいこうとおもいます。

では、その後の話です・・・・!

 

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再入院から3日目。

昨日は緩和ケア病棟の担当医との面談がセッティングされていた。

ここは大病院だけれど、「医師」というと、これまでは救急外来を除けば

わたしはずっと呼吸器内科の主治医としか話していない。

それがこの日は初めて別の医師と話す。

それも緩和ケア病棟のセンター長という方との面談である。

緊張しないわけがない。

 

(これもまた、いつかどなたかの役に立つ話かもしれないので詳細に書きます)

 

おそらく全国どこの病院の緩和ケア病棟も同じだと思うけれど

緩和ケア病棟というのはいくらガン患者であっても「入りたいです」と言えば

誰でもすぐ入れる・・・という病棟ではない。

他の病院で入院治療している場合は担当医師から緩和ケアセンター医師への

紹介状を書いてもらって予約受診、そして面談、判定会議を経て入院可否が審査され

後日結果が通知される・・・というしくみ。

近隣のどこの緩和ケア病棟も常に満床で、

せっかく入院が認められても順番待ち・・・という地域もあるらしい。

幸いにも、父の病院の緩和ケア病棟は満床になることはほとんどないとのことだった。

 

父の場合は、転院ではなく同じ病院内の緩和ケアセンターへの移動だったため

こちらは特に何もする必要はなかった。

呼吸器内科の主治医から緩和ケア医師へと病院内で連絡をしてもらえるからだ。

入院の可否についても同じ病院の主治医が勧めて・・・の話であるため

基本的には「入院可」であることが前提の今回の話だったけれど

それでも看護師さんからは

「場合によってはご希望に添えない場合もあることをご了承くださいね」と、

あらかじめ言われていた。

 

そうやって、緩和ケアセンター側の許可が出なければ緩和ケア病棟には入れないため

現在の父はまだ一般病棟の大部屋に一時的に入院中である。

大部屋嫌いで、入院といえば必ず個室を選ぶ父を

カーテンで仕切られた窮屈な大部屋に入れている・・・という状況。。。。

これもまたわたしの罪悪感を上積みした。

  

面談は家族と本人が出席。

ただ、本人が出席できるかどうかは体調にもよるので、必須ではないらしい。

わたしの場合、入院を頑なに嫌がっていた父を

緩和ケア病棟への面談の場に同席させるのは、避けたかったので

(本人が緩和ケア医師の前で入院拒否してややこしいことになる可能性)

入院中の心の支えである、いつもの相談員Sさんにお願いし、

Sさん経由で緩和ケア病棟の看護師長さんへ「本人同席なし希望」を伝えてもらえた。

 

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話が長いので、結論から先に言うと

緩和ケア病棟への移動は正式に認められました。

その面談を振り返っての話を書きます。

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さて、いよいよ面談。

呼吸器科の病棟看護師さんに案内されて、ついに緩和ケア病棟の扉の向こうに入る。

(※以前も書いたけれど、緩和ケア病棟は大きな扉で仕切られているので一般の人は中を見ることもできない)

 

ナースステーションの前で

緩和ケア病棟の看護師長さんがわたしを満面の笑みで迎えてくださった。

もう一目でこの方のことが好きになった。

包容力にあふれた、温かい人だとすぐにわかったからだ。

面談はこの看護師長さんと緩和ケア病棟のセンター長(医師)とで行うことになる。

 

ところで、事前に相談員Sさんのほうから、

この面談は

緩和ケア病棟を正しく理解するための家族の意思確認の場のようなもの

だと聞かされていた。

つまり、緩和ケアでは治療を一切しないこと、モニター類もつけないこと、

延命処置は一切しないこと・・・などなどを確認し、

それでもいいですね?という、

緩和ケア側と家族の気持ちに誤解やズレがないことを確認するための面談だと。

 

ブログ読者の方ならおそらく想像がつくとおり、

わたしはどんなことでも、気になることはとことん調べるタチなので・・・(汗)

父の病気のこと、予後や緩和のこと・・・

言うまでもなく、事前にこれでもかというほどにいろいろ調べて勉強している。

当然、緩和ケア病棟というものの意味を正しく理解してこの場に来たつもりだったので

すべて承知の上で、面談に臨んだ。

 

ところが・・・・この面談、

わたしが思っていたものとちょっと違っていて、実は結構緊張を要するものだった。

面談の内容は、よその病院の事情はわからないので比較はできない。

これが普通なのか?この病院独特なものなのか?

なんというか、面談というよりは、面接試験・・・(汗)

言ってみれば

 

「家族が試されている」

 

と感じるものだった。

 

どういうことかというと、まず最初にセンター長(医師)から、

「現在のお父様の病状について知っていることを教えてください」

と言われたのだ。

 

普通、医師と患者の関係・・・というと、医師の説明を患者が聞く・・・という

そういう構図になるのが一般的である。

ましてや、父に関していえば病院内でいくらでも情報共有できるわけで

わたしに聞かなくても、父の病状はこの医師は十分に承知しているはずだった。

それをセンター長さんは、わたしに説明するように求めたのだ。

 

つまりその質問の意味は

わたしが父親の病状・状況をどれくらい正しく詳細に把握しているか?

を確認するものなのだ・・・と、すぐに理解した。

 

初めてガンの疑いがかかった2年前の時点からの経過を

現在にいたるまで、そして現在の父の痛みのことなど、事細かに説明した。

すべて自分が一番近くで関わって、見て来たことだから

父について説明できない部分はひとつもない。

 

さらに、今回の入院までは家でどんな生活をしていたか?についても

説明を求められたので、詳しく話した。

これも、自分がかかわっていなかったらきっと答えられないことだった。

 

これらの質問は、家族がどれくらい親身に患者を理解して、寄り添っているか?

今後もきちんと寄り添う家族であるかどうか?を

確認されているような雰囲気があった。

 

「私はあまりよく知らないんですけど」などと言おうものなら、

緩和ケア病棟への入院は許可されないのでは?と感じるほどに。

 

・・・というのも、事前にもらっていた、

緩和ケアセンターについての詳しい説明パンフレットの中には、

「緩和ケア病棟は24時間完全看護の介護施設ではありません」という一文があり、

わたしはそこにドキっとさせられたからだ。

 

もちろん、それは完全看護はしませんよ・・・という意味ではない。

そういうことではなくて、

緩和ケア病棟というところは、「患者を安心して任せられるところ」という

場所ではあるけれど、それを支えるチーム側は

 

「緩和ケアに入る以上、
家族もまた出来る限り時間を割いて患者に寄り添ってください、
患者を不安にさせないでやってください。」

 

と求めているというメッセージだった。

実際にセンター長であるこの医師からも、それを言葉にして再三言われた。

  

だから、わたしが父の病状や普段の暮らしについて話せなかったとしたら、

それは彼らにとって

「この家族は患者に寄り添うつもりはなさそう」

と映ったに違いなかっただろうなと思った。

 

呼吸器科病棟の看護師さんも以前

「高齢者の患者さんになると”何かあったら電話ください”というだけで

ほとんど見舞いにこない家族も多いんですよ。」

と言っていたことがあるくらいだし、

それがましてや緩和ケア病棟・・・となれば、

高齢者の家族の場合は介護施設と同等に考えて

「あとよろしく」な家族ががいても不思議ではないかもしれない。

 

正直なところ、緩和ケア病棟は一般個室は無料・・・と優遇されている病棟なので

介護施設に入れるよりもずっと安価で済むはずだし・・・・。

 

もちろん緩和ケアへの入院は、誰よりも患者本人の意思が最優先ではあるものの、

わたしたちのようにどちらかというと

家族の意思主導で高齢者を入院させようと思っている場合は、

そういう患者家族の「姿勢」は大いに問われている気がした。

 

「場合によってはお引き受けできない」のケースに該当するとしたら、

その部分の「家族に対する評価」だったかもしれない。 

もちろん、これはあくまでもわたしが感じた話であって、根拠はない。

 

ほかにも、人工呼吸器やセデーション(鎮静剤で眠らせること)の説明の場面では

昨年秋に重度の肺炎を経験して、

マスク型の人工呼吸器で5日間鎮静状態にあったこと、

そのときにセデーションを経験しているので鎮静がどういう状況はわかるし、

挿管による延命治療はその時点でもお断りしているので大丈夫です、と説明。

センター長からは、「いろいろ経験されているんですね」と驚かれた。

 

さらに話が進む中で

栄養が摂れなくなった時の「点滴についてはどう考えてますか」とセンター長から

質問された。

 

わたしが

「点滴は末期がんの患者にはむしろ体の負担になると聞きました。むくみや胸水の原因になると・・・。なので点滴が必要かどうかの判断についてはそちらにお任せしたいと思います。苦痛につながる点滴であれば希望しません。」

 

と答えると、センター長が

 

「お~、よくご存じですね。その通りなんです。栄養が摂れないとすぐに点滴してほしい・・・と言われるご家族も多いのですが、点滴は今言われたとおり・・・」

 

と、とても驚いてわたしの回答に反応してくれたので

もうこの面談をすっかり「面接」のように感じていたわたしは

思わずここで「よし!これで面接通ったんじゃ?」と思ってしまうなどした。

ちなみに、点滴の件は在宅訪問医師の書いた本を読んで得た知識である(笑)

 

少なくとも、この家族はきちんと理解している・・・ということは伝わったと思う。

 

こういった面接的なやりとりのあと、

今後の流れや、父の余命についての話などもあったのだけど

長くなるのでそれはまた別記事で。

 

一通りの面談の最後に、その場で父の緩和ケア受け入れは認められ

わたしは深く胸をなでおろすこととなった。

面談は30分ほどで終了したが、なんだかとても緊張した時間だった。

 

面談を終えたあとは、父と同伴して緩和ケア病棟を見学できることになっていた。

 

看護師長さんから

「さあ、では一緒にお父様をお迎えに行きましょう。病棟内をお父様にも見てもらって

お部屋を選んでいただきましょうね。」

と言われ、わたしとともに父の病室へ行くことになったのだけど

 

廊下を歩く途中に、この看護師長さんから

 

「これまで2年間、本当におひとりで頑張っていらしたんですね。

相談員Sからも娘さんがとても頑張ってくださったとお聞きしましたよ。

大変でしたね。お身体は大丈夫ですか?

これからは少し休んでいただいて、

そしてわたしたちと一緒にお父様を支えていきましょうね。」

 

と、無防備な気持ちでいたところに、

突然柔らかな笑顔で言葉をかけられ、思わず涙ぐみそうになった。

 

いたわり労ってもらえることに。

そして温かくわたしたち親子を緩和ケア病棟へと迎え入れてくれることに。

 

本当にわたしは優しい人たちに囲まれている。