新たな問題浮上。

早いもので、入院から今日で9日目になる。

父の病状はというと、先週主治医から言われたように、

入院の原因となった肺炎のほうは、

日ごとに良くなっているのかもしれないけれど、

父の呼吸状態を示す数値はなかなか改善されないせいか、

相変わらず力のない状態で病院のベッドで1日過ごすだけの生活が続いている。

 

 

そんな父。

入院後の不安材料のひとつだった「せん妄」は起こっていないのだけど、

記憶力の低下が顕著で、本人がそのことをとても不安がっている。

わたしに話したいことがあるのだけど、それを思い出せなかったり、

説明するための言葉が出てこない・・・などで

「どうして思い出せないんだろう?」「言いたいことがうまく言えない」と

自分にイラついたり落ち込んだり。

 

とりあえず「思い出せないという状態を認識できている」だけ、マシだと思うけれど

しゃべりがものすごくスローになってきたし、

その言葉の遅さから、

ああ・・・脳の働きが一段とスローになってるんだなあとなんとなくわかる。

 

実は、3日ほど前に大失態をやらかしたらしい。

自分の失態を理路整然と説明できたわけではないので、断片的に聞いた話を

わたしが組み合わせて「そういうことだろうな」と解釈した内容を書くと・・・

 

父、「ひとりでトイレに行く許可」は出ていないのに、

「もう大丈夫だろっ」と自己判断して、内緒でトイレに立つ。

足元にはセンサーマットが敷かれているのに、

それを足で蹴飛ばして踏まないようにするずる賢さも発揮。

頑張って立ち上がったと思ったら、何やら股のあたりにイヤな感触が。

なんと、自分は我慢しているつもりが勝手に尿が出ていた。

紙パンツを着用しているので、その時点では大惨事にはならず、横漏れしたものが

足をつたってしまう程度だったが、自分の意思で排尿を止められないのでパニくる。

そこで看護師さんを呼べば、被害は最小限で済んだのだが、

父はトイレを強行して、垂れ流しながらトイレまで歩く。

が、やっとの思いでトイレの便座に座り込むが、今度は立てなくなった。

そこでやむを得ず、トイレの呼び出しボタンを押す。

トイレの呼び出しボタンは緊急事態を意味するので、

看護師さんが血相変えて飛んでくる。

当然、勝手にトイレへ歩いたことを叱責される。

看護師さんの助けを借りて便座から立ち上がろうとしたときに

父、うっかり誤ってウォシュレットのボタンを押してしまう。

自分もトイレも水浸し・・・・・Ohhhhh・・・・

 

・・・とそんなことをやらかしたらしい。

 

大迷惑な行為をして、看護師さんに多大な迷惑をかけた模様。

看護師さんからは、「次に同じことをやったら今度はホントに怒りますからね」と

きつく釘を刺されたそう。

全く自業自得である。

 

これまでの入院でもそうだったけれど、父は自分の体調のいいときは

看護師さんのことを「小娘」と見下したり、男性看護師や理学療法士にはふてくされた

態度で挨拶も無視してロクに返事もしない、

危ないからと入浴介助を申し出るだけで、「無礼」といわんばかりにキレるなど、

わたしが代わりに「すみません、すみません」と謝ることがたびたびあった。

(もちろん、お気に入りの看護師には饒舌になるなど、好き嫌いの激しさもあり)

 

そんな父も、さすがに今回のことは全面的に自分が悪いと認めたようで・・・

加えて、

「もっと動けると思った身体が思った以上に動かなかった」

「自分の意思に反して尿が出てしまった」

ことが、看護師さんに迷惑をかけてしまったという事実以上に、

それがショックだったようで非常に落ち込んだ様子でしょんぼりしていた。

 

私「これでよくわかったよね。いい勉強になったよね。看護師さんがダメです、と

いうことにはちゃんと理由があるってわかったよね。

これからは看護師さんの言いつけはちゃんと聞きましょうね。

これからは必ずトイレのときは看護師さんに言おうね。勝手に行っちゃダメだよ。

看護師さんはただでさえ患者さんのお世話に忙しいのに、

その看護師さんを自分の勝手な行動のために、

床に這いつくばらせるようなことをしたら、それはダメだよね?」

 

父「NORAKOさんの言う通りです。本当に反省してます。
もう絶対に勝手なことはしません。」

 

私「そうだね。そしてこれからは看護師さんに何かしてもらったら、

必ず”ありがとうございます”って言おうね。

謙虚で素直な患者でいないと、かわいがってもらえないよ。」

 

父「そうします。これからはちゃんと謙虚になります。」

 

といつになく素直に頷いた。

 

 

猛省した父は、本当に変わった。(いつまで続くかわからないけどね)

ちゃんと看護師さんに挨拶とお礼ができるようになった。

しかし、実はトラブルはこれだけで終わらなかった。

 

このまた翌日のこと。わたしが病室を訪ねた時の会話。

わたしの顔を見るなり、話したくてしょうがなかったという顔をして父が口を開く。

 

父「NORAKOさん。実は落ち込んでます・・・。」

 

私「どうしたんですか?」

 

父「またやってしまいました。」

 

私「あら。やってしまいましたか(笑)今度は何をやったのかな?(※ここは決して責めない&バカにしないことが大事)」

 

父「・・・・・・(必死に思い出そうとしている)」

 

私「またトイレ失敗しちゃったの?」

 

父「・・・・そうです。」

 

私「あ~あ。また勝手に行っちゃったの?(笑)」

 

父「ううん、そうじゃない。そうじゃないんだけど・・・・ちょっと待って。
今思い出そうとしてるんだけど、思い出せない。どうして思い出せないんだろう?」(必死に考える)

 

私「いいよ、ゆっくりでいいよ~。じゃあね、わたしから質問するね。それは昨日のこと?」

 

父「そう。」

 

私「それはお昼だった?夜だった?」

 

父「お昼だったと思う」

 

私「それで、どうしちゃったの?トイレに行きたくなったんだよね?看護師さんはちゃんと呼んだ?」

 

父「呼んだ。」

 

私「それならいいじゃない。ちゃんと呼んだけど失敗しちゃったのは、気にしなくても大丈夫だよ。それは仕方ないことなんだよ。」

 

父「そうか?」

 

私「うん。そうだよ。トイレが間に合わなかっただけだよね?わざとじゃないんだからお父さんは何も悪くないんだよ。だから気にしなくていいのよ。」

 

父「うん・・・それが・・・はあ・・・一体どうしてこんなことになったのか・・・」

 

私「どういうこと?」

 

父「トイレに行きたいなあと思って・・・ちゃんと早めに看護師さんに連絡をしたんだけど・・・自分で起きようとしたら・・・何にもしてないのに勝手に出てたんだ」

 

(つまり、自分では尿意を我慢しているつもりが失禁してたってことらしい)

 

私「そっかそっか。でも紙パンツ履いてるんでしょ?だったら気にしなくていいんだよ。(出来るだけあかるく!)」

 

父「でも、よくわからんのだが・・・パジャマも濡れてて・・・」

 

私「ああ、紙パンツから漏れちゃったんだね。いいんだよ。それはお父さんのせいじゃないから。いいんだよ。紙パンツがちょっと緩かったのかもしれないね~。今度、わたしがもっと漏れそうにないやつ買ってきてあげるから。」

 

父「きっと看護師さんは怒ってたと思うよ・・・(イジイジ)2日も続けてこんなみっともないことを・・・情けないったら・・・一体どうして急にこんなにモウロクしたのか・・・」

 

私「病気なんだから仕方ないんだよ。誰でもそうなるから大丈夫だよ。看護師さんはプロだからね、慣れてるから怒ったりしてないと思うよ。今回は勝手なことしたんじゃないのだから、気にしなくていいんだよ。それにね、呼吸器病棟なんて、入院するのはほとんど年寄りだからね、ほかの病室の前に紙おむつのワゴンが置いてあるのをあちこっちで見かけるよ。お父さんだけじゃないよ。みんな同じだよ。」

 

父「そうなのか?そんなにみんな紙おむつを使ってるものか?」

 

私「(まあちょっと盛りすぎたけど)うん、置いてあるよ。この病棟は年寄りばっかりだから、おむつを使うなんて当たり前のことなんだよ。だからね、気にしなくていいんだよ。失敗しちゃっても、看護師さんに”ごめんなさい”と”ありがとう”をちゃんと言えば大丈夫。」

 

父「うん・・・わかった・・・。そうするよ。お前にそう言ってもらってちょっと気が楽になったよ。」

 

 

なんだかまるで、トイレトレーニングをしている小さなわが子に

「トイレ間に合わなかったの?いいんだよ、いいんだよ、

教えてくれていい子だったね~」

と、慰めている母親のような気分だった。

 

年を取ると子供に返っていくと・・・とは良く言うけれど、

弱気になってクヨクヨしている父は、まさに心細く、母親に慰めてもらいたくて、

甘えたがっている小さな子供のようだ。

 

また元気になって動けるようになったらいつものパンツに戻せばいいのだから、

今は失敗しても大丈夫なように、紙パンツを使おうね、と優しく言い聞かせ

 

父の自尊心を傷つけないように、そして恥ずかしいと思わなくてもいいんだよと

(まあそんなに簡単なことじゃないけれど)安心させようと努めた。

できるだけ、あっけらかんと

「よくあることだよ」というニュアンスで父の話を受け止めた。

 

しかし、父との会話はそうやって「どうってことないよ」のムードで終わらせたものの

わたしの心の中は当然、穏やかではいられない。

うーん・・・これは困ったな・・・と、

また「退院後の生活」への不安が一気に高まる。

 

これ、退院までに元通りになるんだろうか?

 

わたしは、ブログの中でも「自分でトイレへ行けなくなったら」ということを

何度も書いてきたけれど、

それは

認知症になってトイレがわからなくなったら」

「足腰が弱ってトイレまで歩けなくなったら」

・・・の2つのパターンしか、想定していなかった。

 

入院後の父は、看護師さんの見守りのもとに室内のトイレには歩けていると

聞いていたので、

「ああ、とりあえずトイレまで歩ければ一人暮らしもなんとかなるかな」

と安堵していたのだ。

それが急にこんなことになって、

本人の戸惑いはもっともだし、わたしにとってもこれは困ったぞ・・・な話。

 

父のつたない訴えを整理すると、おそらく

「尿意を我慢しているつもりなのに、勝手に尿が出てる」という状態のようなので

それはいわゆる「排尿困難」の一種かな・・・?と。

ともかく、尿意をコントロールできなくなっているのは確か。

 

その原因は泌尿器の病気なのか?老化なのか?それとも・・・・最悪、脳転移か?

いろいろ考えられる素因が多すぎて、うーん。

 

こういう状況なので、

前回の入院時・・・・ほんの数週間前に

看護師さんから「リハビリパンツは使っていますか?」と聞かれ、

 

看護師さんをにらみつけて「そんなもの使うわけがない」と憮然と言った父も、

今はすっかりおとなしくなって、

看護師さんに迷惑をかけないようにと紙パンツを履いている。

 

そういう意味で、「どうやってリハビリパンツを勧めようか?」という

問題はあっけなくクリアできたことになるけれど・・・・

これはまさに「介護は突然やってくる」と言われる通りのスピード展開だ。

 

そして早急に検討しなければならない「ひとり暮らしが継続できるか?」という問題。

 

確実に黄色信号である。

 

 (この話はまだ続きます)