3週間経って。

父が再入院して1か月・・・緩和ケア病棟に移って3週間になる。

振り返ってみるとあっという間。

病室へ・・・と場所を移したわたしの通い介護もずっと継続中だ。

 

父の様子は・・・というと、

この3週間の間にゆっくりとじわじわ衰弱が進んでいると思う。

 

緩和ケア病棟に入ってからの変化を挙げてみると・・・

 

■食事を自分で食べられなくなった

今は100%食事介助が必要な状態。

スプーンを持つことができないことはないと思うけれど

食べようという「意欲」が一切ないので、

本人にスプーンを持たせると食事が全く進まないのだ。

なので朝夕はわたしが食べさせる。

父はそれに対しては、まるで条件反射のように口を開く。

おいしい・・・とも、まずい・・・とも感想も言わないのだけど

満腹になると「もうおなかいっぱい」と言うのでそこで食事が終了になる。

ちなみに昼食は看護師さんにお願いしている。

あと、以前はストローをつけたペットボトルのお茶を飲んでいたけれど

これも最近は飲める日と飲めない日が出てきた。

吸う力がなくてストローでお茶が飲めない日があり、

そういう日は「楽のみ」で飲ませてやる感じ。

 

■食事量の低下

わたしが食事介助することによって、

かろうじてギリギリ食事量を確保しているといっても過言ではないかもしれない。

もともと全粥&ペースト食なので、

普通食の半分くらいの病院食なのに、

わたしが介助しても1食平均5割・・・たまに7割食べてくれると「おお!」となる。

ダメなときは0割。(つまり全く食べてくれないことも珍しくない)

看護師さんにお願いしている昼食にいたっては0~2割という状態らしい。

昼間でも、眠っている時間が多いせいか

夕飯が運ばれてくると「さっき(6時間前)食べたばかりなのにもう?」と

うんざりした顔をされる。

当然、身体はさらに痩せて枯れていく。

体重はもう40キロくらいしかないかもしれない。

 

■完全おむつになった

緩和ケア病棟に入ってすぐに1度転倒した際、一時的にトイレが間に合わなくなり

リハビリパンツから完全おむつに変わった時期が数日あったけれど、

その後はまた復活してトイレに行けるようになっていた。(リハパンに復帰できた)

けれど、これも車椅子と同様に今週になってからなぜか突然失禁が始まり、

おむつやむなし…となった。

驚くのは、もう父本人に「尿が出た」という感覚が一切なく

どうやら失禁したことすらわかっていないのにも関わらず

なぜか定期的に「トイレへ行きたい」と言い出すこと。

朝晩、1日2回はトイレに行きたいと言う。

それで、看護師さんがトイレまで車椅子で連れて行ってくれるのだけど

トイレに行くと、もうすでにおむつの中に失禁していることがわかる。

だからトイレに座ったところで、出るものも出ないのだけど・・・・

わたしはそのたびに、看護師さんに無意味な仕事を頼んでいる気がしてしまって

ものすごく罪悪感にとらわれ「すみません」と謝ってしまう。

看護師さんは「行くことでご本人の気が済むからいいんですよ」と、

嫌な顔ひとつせず、父の「トイレに行きたい」に付き合って下さるし、

「もうおむつの中に出てますよ」などとは父に絶対に言わない。

黙ってさりげなくパッドを交換してくれるので、

その姿勢には本当に頭が下がるばかり。

ちなみにこういう尿・便失禁も終末期や脳転移の症状としてよくあることらしい。

 

■寝たきり生活へ移りつつある

「食事は車椅子で」ということにわたしはこだわっていたけれど

今週になってから父のほうが倦怠感からか、それをイヤがるようになり、

食事はベッドの上でわたしが食べさせる・・・というのが当たり前になってしまった。

そして排泄の感覚もわからなくなっておむつになった=トイレへ行く回数が減った

ということで、

1週間前と比べるとベッドの上での生活が明らかに増えた・・・

というか、ほぼベッド上で暮らしている。

自分で寝返りをうったり、膝を立てたりなどある程度は動けるせいか、

床ずれはまだ大丈夫らしい。

最初に食事を車椅子で摂ることをイヤがった日には、

「そんなことじゃ寝たきりになっちゃうじゃん」と気持ちに焦りが出たりしたけれど

ここは緩和ケア病棟だというのに、

自分は何に必死になっているんだろう・・・?と我に返り

今はこれも衰弱の過程なのだ・・・と受け入れて無理強いはしなくなった。

  

■せん妄はずっと継続

入院時からずっとあったせん妄は相変わらず続いている。

突拍子もないことを言うことも多いし、

普段どおりの口調で全くつじつま合わないことも言う。

父の場合、一番多いのが幻覚と妄想。

「そこにないもの」が見えていることが多い。

特に、よく病室の天井を見上げてはいろいろなことを言う。

「あの絵はお前が書いたの?」

「あの〇〇は誰が飾ったの?」

「見てごらん、あそこに〇〇がいるよ。」

食事中に時々怖いのは

「あの人はご飯食べないの?」と、壁を指さすこと(笑)

わたしや家族、主治医の名前などはわかるけれど、

緩和ケア病棟の看護師さん(←父にとって新しい情報)はわからないことも多く

看護師さんが出て行った後に「さっきの人はだれ?」と聞いたりする。

そして病院だということがわからない、入院していることもわからない。

「ここは〇〇病院だよ。お父さんは入院してるんだよ」と

教えることが1日1回はある。

眠っているときに、両手を天井に向かって動き続けることもよくある。

手が宙を舞って、何かの操作をしているように見える。

これもせん妄特有の症状らしい。

ただし、せん妄状態にはあっても、

目の前の会話はできる。「痛みはどう?」「ご飯食べる?」などの

意思の疎通はできるので、あまりコミニュケーションで困ることはない。

だからパっと見は、父がせん妄状態にあるかどうか?見分けがつかない人もいる。

記憶も長持ちしないので、何かの会話をしてもひと眠りするとすぐに忘れる。

なので、「帰りたい」など、困ったことを言われても、

その場ごまかせばOK・・・みたいな感じにもなっている。

困るのはやはり突然「攻撃的」になるとき。

何かが憑依したかのように、思い当たるきっかけも理由もなく、

本当に突然怒り出すのでそうなると手を付けられない(遠巻きに見守るだけ)。

看護師さん達とは、そんな状態の父になったときには

「今スイッチ入ったみたいで・・・」などと表現するようになった(汗)。

 

■言葉が出づらくなってきた

これもせん妄の症状なのか・・・それとも脳転移なのか・・・?

(※検査はしていないので脳転移があるかわからない。けれど肺がんは50%の確率で脳転移するらしいのですでに骨転移している父が脳転移していてもおかしくない)

わからないけれど、この頃急激に言葉が出づらくなったなと感じる。

しゃべることが自体がものすご~~~くスローで、

一言一言、話すたびに次の言葉を考えてはアワアワすることが多々ある。

知っているはずの簡単な言葉や表現が出てこなくて、父本人もストレスが溜まる様子。

 

たとえば一緒にテレビのニュースを見ているときに、たまに父がニュースについて

感想を言おうとするのだけど、言葉が出てこないので考えているうちに

どんどんニュース別の話題に進んでしまい、

「何を話そうと思ってたかわからなくなる」ということがしばしば起こる。

同様に、目から入る情報も脳で認識するのに時間がかかるようになってきたので

テレビのニュースに出る字幕(日本語)のようなものも読めなくなった。

(読もうとしているうちに画面が変わってしまうので頭で処理できない)

 

年相応といえばそれまでだけれど、いずれも入院前にはなかったもので

ここ2週間くらいで急激に現れた変化なので、

せん妄か脳転移(可能性)の影響かなと思う。

 

■痛み止めが貼り薬になった

これはまあ、父の体調変化ではないけれど・・・・

痛み止めの麻薬を飲まなくてはいけない時間帯に寝ていることが多くなってきたこと、

そして、せん妄状態によって突然攻撃のスイッチが入り

薬を拒否して看護師さんを困らせる・・・などが多発したため、

朝晩1日2回服用していた錠剤をやめて、1日1回張り替えればOKという

貼るタイプの痛み止め(もちろん麻薬)に変わった。

せん妄のせいで本当に、びっくりするくらい突然スイッチが入ることがある。

目をカっと見開いて、鬼の形相になる。

急激な痛みの時には今も「頓服」を服用するのだけど

入院中なので、看護師さんに持ってきてもらわなければならない。

父が苦痛に顔をゆがめるので「薬もらおうか?」と聞くと「うん」と言う。

それなのに、ほんの2~3分後・・・

看護師さんが頼んだ薬をもって登場したとたんに、

攻撃スイッチに切り替わり、しかも薬を欲しがった事実を忘れてしまい

「オレはそんなものは頼んでない!オレに毒を飲ませて殺す気だな!」

などと言ったりすることもよくあり、看護師さんを困らせている。

1日2回のベース薬が錠剤から貼り薬に変更になったのはこれも大きな理由。

せん妄によって突然怒りのスイッチが入るうえに、

薬を飲まないと痛みがひどくなるのでよけいにイライラとして怒り狂うからだ。

 

貼り薬なんか効果あるの?と思ったが、

ちゃんと効果は出ているようで錠剤の時と同じくらいには効いている様子。

 

・・・と、大きな変化はこんなところ。

 

 

こうやって書き出してみるとなかなか大変そうに見えるけれど・・・

父親の体調に完璧を求めなくなって、

ひとつひとつ「もうこれはできないんだな」とあきらめることが

少しずつ増えてくる状況になってくると

弱っていくこと、できなくなっていくことにすら、慣らされていくものなのかも。

できなくなったことを目の当たりにして「ショックを受ける」ということは

もう全くなくなった。

それはこの状況に、徐々に慣れてしまってるからなのだろうなあと思う。

 

食事を摂れなくても、おむつになっても、ほぼ寝たきりでも、せん妄がひどくても、

「まあ苦しんでないからいいんだな・・・」と、そこだけが基準になってくる。

 

 そんな私が今一番気がかりなのは・・・・

やはり「退院」の問題。

入院時よりも全身状態の衰弱が進んでいるのは明らかだ。

特に排泄のできなくなった父を、

一時的にとはいっても、ひとり暮らしの家へ連れて帰れと言われたら

どうしてよいやら・・・という状況になる。、

 

来週にも、緩和ケア病棟に移って30日に達するので

退院の話が出たらどうしよう・・・と日々ドキドキしている。

 

実はちょっと気になっているのは、

今現在、確実に父よりも前から入院していた患者さんが2人いること。

その人たちの姿を廊下から見たことがあるけれど

(ドアもカーテンも開け放ってることがよくある)

身体の中はともかく・・・パっと見は父よりずっと状態がよさそうに見える。

(父のようにガリガリではないし、張りのある声で会話もしているし・・・)

でも確実に1か月以上入院していると思うので・・・

そういう患者さんもいるということは間違いなさそう。

 

できればこのまま一時退院なしで置いてもらいたいけど・・・

やはり難しい・・・ということになれば

来週はとたんに慌ただしいことになるかもしれない。

(ケアマネさんや訪問看護に相談などなど)

 

三連休・・・・台風も心配だけど

わたしにはそのことのほうがもっと心配だ。