プロフェッショナル2

昨日、父の退院を前に病院で担当者会議の席が設けられた。

父の同席もよかったら・・・?と勧められたが、やんわり拒否。

 

父はその場にいないほうがいい。やりにくいだけ・・・。

会話の中にいるとわたしはもちろん、

同席する担当者さんたちも父に配慮して言葉を選ばないといけなくなるので

面倒なことになるし

(認知力理解力が著しく低下、この先ガンが進行した場合、という話ができなくなる)

 

父の理解度を確かめながらの進行・・・だと時間ばかりかかりすぎること確実。

なので、「新しく決まったことだけ本人に伝えればいいです」と告げた。

 

包括支援センターの担当者さん、訪問看護の主任さん、相談員Sさん、

病棟看護師さん、の4人とわたし・・・の、計5人での話し合いとなった。

(ヘルパーさんを派遣してもらっている介護事業所の方は急な話・・・ということでスケジュール調整できず不参加)

 

父の心身の状態を全員で確認。(看護師さんからの入院中の説明など)

退院後、一番問題になるのは今回の入院のきっかけとなった「薬の過剰摂取」

医療用麻薬の頓服自体は、痛みがひどければ何回飲んでもOK・・・という

説明で処方されている薬だけれど、(ただし要記録!)

父の場合はブログでも書いているとおり、

どうも傾眠・意識障害の副作用が特に強く出る状態で、

なおかつ最近は飲んだことを忘れる場面が多い。

(↑これが本当に問題)

 

実はこの日も、担当者会議の前に病室で父に「今日は頓服は飲んだ?」と

聞いたら、「1時間前くらいに飲んだよ」と答えていた。(そのとき午後3時)

「痛み日記には”朝8時”って書いてあるけど?」と不思議に思って確認すると

「朝も飲んだけど、1時間前にも飲んだよ」と父は答えた。

 

担当者会議の席で、看護師さんにそのことを確認してみると、

実際には服用したのは「午前8時1回のみ」だったことが判明。

父の言った「1時間前にも飲んだ」はどうやら吐き気止めの薬のことだった。

 

つまり、今の父はこのくらい薬の服用の記憶が怪しいというわけ・・・。

 

そのために「毎日必ず誰かが父の服薬管理と体調変化を確認する」という

体制をつくるべく、サービス利用の見直しをしてもらえることになった。

 

これまでは、

週2回のヘルパーさん(1時間×2回

週1回の訪問看護(30分×1)

だったのが、

週3回のヘルパーさん(1時間×2回、30分×1回)

週2回の訪問看護1時間×1回、30分×1回)

 

・・・という形に。

つまり、今まで週3日だったのが、今後は週5日間、

誰かが必ず父の様子を見てくれるということ。もちろん、わたしも今までと変わらず

通うことになるけれど、「見守る目と回数」は多ければ多いほど安心。

もう本当に助かるし、ありがたい。

 

パっと見て、よくわからないと思うけれど

上記の「1時間」という枠には「お風呂見守り」が含まれている。

父は要支援2で介護保険の枠が少ないため、

介護サービスによるお風呂見守りは、「週2回」しか使えなかった。

 

お風呂はやっぱり週3回は必要なので、サービス利用のできない残りの1回分は

わたしが土曜日に「お風呂見守り」する・・・ということで対応していた。

でも、その分多くの時間を割かれるし、「お風呂があるから行かなければ」という

精神的プレッシャーは大きく・・・なかなかしんどいことだったのだ。

 

それが、主治医の配慮によって、

父を「治癒の臨めない末期がん」と今の段階で認定してもらうことができたため

訪問看護医療保険で使えるようになった。本当にココはものすごく大きな変化!

 

わたしの負担になっていたお風呂1回分を、訪問看護師さんにお願いできることになり

「週3回のお風呂見守り」の体制ができることになったというわけ。

 

残りの「30分」の枠では、体調チェック(安否確認)と服薬管理ができているか?

のチェックのみをしてもらう感じ。

もっと体調悪化が進む場合には、いつでも訪問看護の回数を増やしましょう、

とりあえずは今はヘルパーさんの協力も得て、これでいけるでしょう・・・

ということになった。

 

 

きっと読んでる方にはなかなか伝わらないかもしれないけれど・・・(汗)

わたしにとって訪問看護師さんと、今まで以上に太いパイプでつながって、

この病院と迅速に連携してもらえる安心感は絶大なものなのです。

 

 

担当者会議は1時間ほどかかった。

終わった後に、病室をもう一度覗いて話しかけたが、父は寝起きだったのか

なんとなく反応が鈍い。

・・・というか、昨日はあまり元気がなかった。

もしかしたら、わたしからの例の反撃(しかも結構残酷なことを言ってしまった)

が堪えて、自分の先行きを不安に思えてきたのかも・・・など、

罪悪感で胸がザワザワしたけれど、

父の病気そのものと、心の問題だけは、わたしではどうにもできない。

自分に出来ることには限界があるのだ、と自分に言い聞かせて病室を後にした。

 

ナースステーションの前で、エレベーターが来るのを待っていると、

さっきまで話し合いの場にいた相談員Sさんがわたしに気付いて声をかけてくれた。

 

Sさん「本当にもう、いろいろごめんなさいね。ご家族として・・・
NORAKOさんとしても、きっといろいろ思うところあると思うけれど・・・」

 

と、何やら意味深なことを言う。

わたしにはその言葉の意味がさっぱり分からなかった。

そして何度も謝るSさん。

本当にその意味が全くわからなかったので

 

私「え?いろいろ思うところ・・・って、ど、どういう意味ですか?(笑)」

 

と笑いながら聞くと、Sさんが答えてくれた。

 

Sさん「今回、お父さんが入院になったことは、わたしたちの責任で、訪問看護を利用している以上、お父さんが麻薬を増量したというときに、その管理にはもっと深く介入すべきだったし、こんなふうにご家族に不安を与えることは許されないことだから。
きっとNORAKOさんも不信感を持ったでしょうし・・・」

 

わたしはその言葉に驚いた。思ってもみない言葉だった。

 

私「とんでもないです!!!そんなこと、これっぽっちも思っていないですよ。
Sさんにも、訪問看護師の皆さんにも感謝の気持ちでいっぱいで、本当によくしていただいて・・・。今回の入院だって、父のところへ行ってくださった訪問看護師さんが
TELで異変を教えてくれましたし、わたしが不安になってステーションに来たときも親身に・・・」

 

と、そこまで言うとSさんがそれを遮るように言った。

 

Sさん「そこが問題なんです。それじゃダメなんです。ご家族の方に相談に来させてやっと入院・・・では、訪問看護の役割を果たせていないということになるんです。
お父さんの場合、もっと早い段階で・・・麻薬が入った段階で訪問看護の介入を増やすべきだったし(Sさんは入院患者担当の方なので、当然そのことを知らなかった)
入院前日、訪問看護が入った時点で異変に気付いていたわけだから
こちら側から受診や入院を勧めるべきだったんです。あれは本当にダメなことでした。
(←看護師さんから連絡をもらって、わたしが父の様子を見に行ったこと)
わたし達は、ご家族に安心してもらえる訪問看護をしなければいけないわけで・・
その責任というものの大きさを認識しなければならないわけで・・・
今回のことは主任(訪問看護)もかなり問題視しています。
なので、今後はこんなことが二度と起こらないように、気を引き締めて看護させて
いただきますから、もう・・・本当にごめんなさいね。」

 

わたしはブログの中でも、訪問看護師さんに対しては感謝の気持ちしか

感じていなかったため、Sさんからこのようなことを言われて心底驚きしかなかった。

 

もちろん、全力で否定した。

 

「とんでもないです!!(笑)やめてください、本当に。怒るどころか、訪問看護師さんたちにはお世話になりっぱなしで、感謝の気持ちしかありません、Sさんだって・・・Sさんのおかげでどれだけ助けられていることか!前回の入院のとき、不安で不安で、この先どうしていいかわからなかった私に、道筋を示してくれたのはSさんなんです。だから今回もまずSさんにと思って、だから・・・・・・・」

 

 

と、最初笑いながら話していたつもりが、ここまで話したところで

 

 

予期せず突然、わたしの涙腺が崩壊した。

 

Sさんは今回の入院に至った経緯を訪問看護の不備だといって謝ってくれたけれど、

わたしは本当に、訪問看護師さん達に対して、感謝こそすれ、

全く怒りも不信感も感じていない。

 

思わず涙が出たのは、思わぬ形でSさんたちの高いプロ意識に触れて

「そんなにも患者や家族のことを真剣に考えてくれていたなんて。こんなに責任感の強い、温かい人たちに支えられる父とわたしはなんて幸せなんだろう。なんてすばらしいスタッフさんたちのいる病院なんだろう」

と彼女たちの気持ちがうれしすぎたこと、

 

そして、普段はブログで綴る以外、

この先の展開に不安を感じながら孤独に通い介護をしているわたしにとって

Sさんの存在はとてつもなく大きく、

その彼女に対して、いつか言いたいと思っていた感謝の言葉を伝えているうちに

張りつめていた緊張の糸が切れてしまったせいだった。

 

 

そのとき、初めてわたしと父の親子関係についても少しだけど話した。

やっぱりいろいろあって、心底仲良し親子というわけじゃないこと、

でも父親を見送ることが自分の役目だと思っているから、後悔を残さないために

自分ができることはしようと思っていること、

本当は、もう自分が家に引き取るべきなのかもしれないけれど、

そうなったら自分の逃げ場がなくなり、

壊れてしまいそうだからそれはできないこと、

だから父の気持ちを尊重して出来る限りは通い介護を続けて、それでも

どうにもならなくなったらそのときは・・・・と。

 

Sさんもいろいろな家族を見てきているし、介護はキレイごとじゃないから

わたしの気持ちはものすごく理解できるし、

「うんうん、一緒に住まないほうがいいよ!」ともハッキリ言ってくれた。

 

老親を病院に入院させたあとは、「何かあったら電話ください」とだけ言って

一切見舞いにこない家族も珍しくないそうで・・・・・

そういう家族もたくさん見てきているから、

「NORAKOさんはお父さんのために本当によくやってあげてる。えらいよ。」

と何度も言ってくれて救われた。

(たぶん、わたしを励ますためにあえて言ってくれたと思う)

そして、「もっと自分のことも優先にして、大事にしてね」とも。

 

 先のことを考えたら不安材料はキリがないくらいに出てくるけれど

訪問看護師さんたちへの信頼は揺るがないし(むしろ増した)

もし入院・・・となれば、そのときはまたSさんに頼ることもできる。

だからきっと大丈夫。

 

周囲に対して常に感謝の気持ちを持っていると、

たぶんそれがまた新たに自分を助けてくれる人との縁を

運んできてくれるんじゃないだろうか?と思う今日この頃。

 

本当に男前で、素敵なSさん。

 

さあ、今日は退院。

今回はたった1週間だったけれど、長く感じたなあ・・・。

 

では迎えに行ってきます。