AM11:00~PM2:00【きっかけは1本の電話】

突然の入院で、自分もびっくりしたし、

たぶんずっとブログを読んでくださっている方にとっても

「え?!はっ?」という感じだったと思います。

何しろ、この記事↓の中で交わされた会話は入院前日のことなのですから。

弁当ストレス。 - N's Hideaway

 

無駄に話をひっぱって、心配させてしまってもいけないので、

結論から先に書くと、父は現在順調に回復中です。

しかも、予想以上の回復力で・・・・!

こんなに早くブログに書ける状態になるとは思いもしませんでした(笑)

なので、どうかご心配なく・・・・。

 

それでもいつものように、ブログにドキュメントを綴っていこうと思います。

知っているようで知らない・・・・

想像できそうで、想像できない・・・

そしていつもいつもキレイな感情だけでは済まない・・・

「こうやって親は老いていく」という一例を、

そして、そのとき家族はどんな心境になるのか・・・という本音を

父を通してあえて書きたいと思っているからです。

いつもどおり長くなりそうなので、少しずつ書き足していきますね。

 

 

 

 

それは日曜日の午前11時過ぎのこと。

外出中で車を運転していたら、配食サービスさんから電話がかかってきた。

配食サービスさんは「独居老人の安否確認」も兼ねてくださっているので

チャイムに反応がない=弁当を受け取れない、場合には

緊急連絡先となっている家族へ電話をかけてくれる。

着信を見た時にもうこの時点でイヤな予感しかしなかったのだけど、

そのときに真っ先に思ったのは「また傾眠か?」だった。

 

 

電話をかけてきてくださったサービスの方が言うには

「うちのドライバーがチャイムを押したところ、いつもなら玄関先まで

出てくるのが応答がなかったそうです。たまたま玄関が施錠されていなかったので

部屋の奥まで上がらせてもらったところ、

〇〇さんは椅子に座っていて、一応受け答えもしたそうですが

明らかに様子がおかしく、いつもと違ったということなので・・・」

と、いうことだった。

その、「どんなふうに様子がおかしかったのか」まではさすがにわからなかったけれど

 

他人から見て「様子がおかしい」ということは相当ヤバイ状況だと思い、

「知らせてくださってありがとうございます」とサービスの方へ告げると

急いで用事をすませてすぐに父宅へ向かった。

 

 

午後12時半くらいに父宅へ着き、ドキドキしながら居室へ。

すると、そこには完全に脱力した状態でだらしなくソファに腰掛けている父がいた。

身体は崩れ落ちそうになっている。

なぜ、会話するまでもなく様子がおかしいと気が付いたかというと

それは父の服装。

 

ストライプのシャツに、コーデュロイのジャケット、

そしてチノパンまで履いている。

季節感が完全におかしかったけれど、問題はそこではなく外出着を着ていること。

 

退院してから、外出は一切していない。

トイレへ行く体力しかない父が、独りで外出なんて今はありえないこと。

だから、その父が外出着を着ていることがもう明らかな異常を示していた。

よく見ると、股間には大きなシミ。

 

そう、失禁していた。

 

酸素を吸っていない状態だったので、慌てて吸入させる。

そのときの血中酸素飽和濃度は80を行ったりきたり。

何度もこのブログで触れているけれど血中酸素飽和濃度は、健康な人で95以上、

健常者で90を下回ったら即入院レベルなので、

80前後と言ったらもうそれは危険水域だ。

酸素を吸わせても、グッタリした様子に変化が起きないので

どうしようどうしよう・・・と考えて、まずは訪問看護へ電話を入れた。

事情を話すと、すぐに来てくれると言う。

もちろん、到着を待っている間に危険な状況になるようなら、

救急車を呼んでくださいとも。

 

こういう話をすると、たいていの人は「救急車呼べばよかったのに」と言うけれど

実際にはその判断って本当に本当に難しい。

明らかに意識のない状態であればさすがに迷わないと思うけれど

父はウトウトと傾眠状態にありながらも、

話しかければ反応して会話にも応じていたからだ。

(ただ、その会話はかみあっていないけれど)

 

少しずつ酸素の状態は改善されて、それ以外には異常は感じられなかったので

わたしの中で「酸素量が戻れば大丈夫なのでは?」と思い、

救急車を呼ぶかどうかも、看護師さんの判断に任せようと思い

到着を待つことにした。

 

そして30分ほどして訪問看護師さんが到着。

徐々に父のぼんやりした状態も、少しずつ戻ってきて顔にも表情が出てきた。

看護師さんにも話しかけたりしている。

ただ、相変わらず話の内容はおかしくて自分の状態はわかっていない様子。

 

おそらく・・・いつものように夜寝る前から酸素を吸っていなくて、

そのまま翌昼まで無酸素・・・だから15~6時間は経過、

極度の低酸素状態からのせん妄を発症して、

外出着に着替えて出かけようとしたけれど力尽き、失禁。

そんなところだったんだと思う。

 

今考えても、よくまあそんな低酸素でフラフラな状態にあって

ひとりで着替えることができたものだ、いったいどうやって着替えたんだ?!と

看護師さんが来てくれたことで少し冷静にもなり、

そんなことに関心してしまっていた。

 

一見、父は酸素以外に問題がないように見えたし、

看護師さんが聴診器で胸の音を聞いても、肺にイヤな音は感じ取れなかったそうで、

「肺の問題ではないと思いますよ」との見解だった。

が、ひとつだけ気になる点が。

それは、熱が39度もあったことだった。

父の手を触ってもひんやりと冷たいので、わたしも看護師さんから言われるまで

まさか熱があるとは気づかずにいた。

しかし、肺の雑音がないので「肺炎ではないと思います」と看護師さん。

 

 

どうやら、水分があまりとれていないようなので脱水症状を起こしたのでは?

熱もそこから来ているのでは?ということで、

「水分をこまめに取ってもらい、落ち着いてきたら熱も下がると思いますよ」と

看護師さん。

 

とはいえ、こんなにぐったりとした父を残して、とても家に帰れない、

どう見てもひとりでトイレに立てそうな状態でもないし、

少なくとも熱の高い状態でひとりにはしておけなかったので、看護師さんに

「今から救急外来に連れて行って、入院させてもらうことは可能だと思いますか?」

と尋ねると、看護師さんは少し考えて

「うーん・・・これだけでは・・・入院・・・とはならないと思いますよ」

と言った。

 

つまり、熱は高いけれどおそらく原因は脱水からきているだけで、

酸素状態に異常はないし、肺炎でもない。

 

いくら家族にとって「この状態の父を家に置いておくなんて」な状態であっても

医療という側面からすると、「水分と栄養摂取」以外、

何か明確に治療を必要とする状態ではないわけで・・・

だから入院は無理でしょう・・・と、そういうことだった。

 

 

ここで初めて、当たり前のことではあるけれど

「老い」と「病気」は区別されることなんだ・・・という

現実を突きつけられた気がした。

 

父はこれまで、病気をいろいろ抱えつつも、

前日まで、自分の足で歩いて動いて生活を続けてきた。

家族としては、その「自分で動ける状態」を正常な状態と思い込んでしまっているから

失禁までしている=異常

昨日まで立てたのに自力で立てない=異常

・・・と捉えてしまい

「立てないほど状態が悪いのだから、入院が必要なんじゃ?!」

と短絡的に考えてしまう。

 

でもそうじゃないってことだ・・・・。

普通の大人であれば、

突然39度の熱が出たといっても、

それだけでいきなり立てなくなるほど弱ったりしないわけで・・・。

フラフラしつつも歩けるはずなわけで・・・

そこでいきなり立てない状態になるのは「老人だから」なのだ。

 

実際、その時の私の気持ちは

「こんなグッタリ元気のない父を、わたしが一晩見なくちゃいけないなんて無理だ!
どうしていいかわからない。お願い、わたしの代わりに病院で面倒見てほしい」

・・・という本音があった。

だから入院させてほしい・・・・!と。

けれど、それが要治療の病気でないかぎりは

「急に立てない状態になった」というだけで、

病院が面倒見てくれるなんてことはないわけだ。

 

そういう問題は介護サービスの範疇になのだ。

 

頭で理解しているようでいても、結局実際にそういう場面にならないと

冷静に考えられないものだなんだなあ・・・・と思い知らされた。

 

さて困った。

 

とりあえず、看護師さんと話して・・・・

わたしはその日、父が夜眠る時間まで実家に残って父を見守り、

就寝させたあとに一旦自宅へもどり、早朝また父のところへ戻ってきて様子を見る、

熱が下がっていなければ、朝いちばんで主治医の外来を受診させる・・・

と、そういう段取りを取ることになった。

 

看護師さんは「念のため夜8時ごろ、状態確認のために電話しますね」と言って、

その場は帰っていった。

 

このとき、たぶん午後2時頃だったと思う。

 

 

(つづく)