がんばれなかった・・・。

前記事の最後で「がんばりどころ」などと自分で自分を鼓舞してはみたけれど

がんばれなかった・・・。

 

昨日の朝8時ごろ、父に電話を入れてみるが全く応答がない。

もうこの時点で胸騒ぎしかなかった。

  

1時間後、午前9時にもう一度電話してみると、

20回くらいコールしたところでやっと出た。

そして、その声はやっぱりぼんやりとフワフワとしていた。

 

「あ~~のらこさんじゃないですかあ~。」と、間延びした声で言う。

今まで寝ていたのか?と聞くと

「はい ねてました ちょうどトイレにおきたところです 

あしがふらふらして トイレへいくのがたいへんです これからまたねます」

などと、小学生の作文を音読するような言葉で話す。

もう胸のザワザワが止まらない。

 

木曜日は通所リハの日なので、配食サービスのお昼ご飯は断っているため届かない。

もちろん、この日の通所リハはお休みの連絡を入れてある。

なので昼食として食べられそうなものを軽く購入して父の家へ向かった。

  

ところが、驚いたことに到着した10:30の時点で父はまだ寝ていたのだ。

もちろん、発熱や息切れで起き上がれなかったわけではなく、

ただただ眠くて寝ていたという状態だった。

 

その後、15分くらい何度も声をかけて話をさせて、どうにかこうにか起こし、

リビングの椅子に座らせるも、声をかけないとまた眠ってしまう。

今思えば、何をそんなにムキになって起こそうとしていたか自分でも謎だけど、

おそらくこの日はヘルパーさんが来てくれる日だったので

「その時間までにシャキっとしててくれなきゃ」という気持ちだったと思う。

 

時計を見るとすでに11時を過ぎていた。

当然、朝食も食べていないし朝の薬も飲んでいない。

 

傾眠は前日よりさらにひどくなっていると感じて

昨夜はどの薬を飲んだのか?と聞いても「のんだかなあ?」と思い出せない。

 

火・木は、ヘルパーさんが来る日でもあり、お風呂の日でもある。

「見守り入浴」という形でお風呂に入る。

ヘルパーさんは時々外から声をかけながら、部屋の掃除をし、

入浴後はお風呂の掃除もしていってくれる・・・という順序で回っている。

(このおかげで、わたしは父親宅の掃除の負担から解放されている)

 

しかし、これはとてもひとりでお風呂に入れる状態ではない。

が、実は前回(火曜日)ヘルパーさんが来た時のお風呂も断ったという父は

計5日くらいお風呂に入っていない状態だったので、

さすがに本人も「入りたい」と言っていた。

 

ただ、そもそもチャイムが鳴っても応答できない可能性もあったので

介護事業所のほうへ電話をいれて事情を話し、

「玄関のカギは開けておきますので、応答がなかったら勝手に入ってもらっていいです。一人でお風呂に入れないと思うので今日は介助してやってください。」

とまで言ってお願いした。

 

夕方の配食サービスも、受け取れないだろう。午後4時ごろにはもう一度来て

わたしが受け取らないとダメだろうなと考える。

  

前日の夕方に、お椀一杯程度のそうめんを口にしただけの父。

お昼に何か食べるか?と聞いても、「なんにもほしくないですねえ」と言い、

メロンパンを1/3程度だけかじった。

水分も、こちらが「飲んで」「飲まなきゃだめだよ」と言わなければ飲まない。

 

こんなことでいいのだろうか?

普通の人であれば、1週間くらいまともに食べられなくても大丈夫だろうし、

そもそも「なんとか最低限の栄養だけは摂らないとなあ」という意識があるので

自分で食べられるものを考えて工夫ができるけれど、

高齢者はまず頭が回らないし、きちんと栄養が摂れないとみるみる弱っていく。

 

わたしに出来ることはなんだ?

ちゃんと薬を正しく飲むように促しても飲んだどうかを覚えていない。

水分を摂るように言っても、わたしが帰れば忘れてしまう。

これをちゃんと食べて、と言い残して行っても、

次の日には買って来たものはそのまま残っている。

そして寝るときに酸素をOFFにしてしまうので何時間でも酸素ナシの状態。

足元はふらふらで、トイレへ行くのが精いっぱい。

 

朝夕2回様子を見に来るといっても、大半の時間はずっと一人でいるわけだし

自分にも限界がきそうだ・・・。

一瞬、「この3連休だけでも兄に来てもらおうか?」という考えが頭をよぎった。

事情を話して、3日間だけでも実家で父を見てもらえないか、と。

誰かに父のことを託さないと、自分のメンタルが崩壊しそうで怖かった。

 

けれど、兄を呼んで何になる・・・?とも思い、決心はつかなかった。

最寄り駅までの送り迎えをしてやらなくちゃいけないし、ペーパードライバーだから

父のために何か買い物してくるとかもできない(田舎は車必須だもの)

送り迎えや買い物は結局わたしがやってやらなくちゃいけないわけで・・・

父を看てもらえても、

兄を呼ぶと、わたしには別の負担がかかるのでハッキリ言って楽にはならない。

 

そして兄は父を心配するという感情を持ち合わせていないから、

わたしがするように父の状態を観察してくれることは期待できないし

普段がどんなだか?を知らないから異変に気付いてくれるとも思えない。

そもそも、「寝れるのはいいことじゃないの?」と深刻に受け止めてくれない可能性。

いや、それ以前に

「週末は予定があるんだけどなあ」なんて言われたら、きっとわたし発狂する。

 

意固地に見えるかもしれないけれど、

正直、わたしの中ではもう金輪際、

兄弟には何も頼むまい、当てにするまい、と決めている。

頼めばいろいろな期待をするし、期待通りに動いてくれないのもわかるし

それに対して苛立ちが募るとわかったから。

兄弟との間に確執を生みたくはないために、

あえて当てにしないことを選んだと言っていい。

 

そんなことを考えているうちにも、父はまた椅子に座ったまま、眠ってしまった。

 

 

とりあえず、その場にいてもしょうがない・・・と思い、

父の家を出たものの、そのまま帰るわけにもいかない・・・とも考え

すがるような思いで、ぼんやりと父の病院へと車を走らせていた。

 

 

駐車場でしばらく動けずに考えた。

訪問看護師さんに相談するべきかな?

でも、それには躊躇があった。

実は、月曜日に予約外で診察を受けた時にも、

診察前にこっそり訪問看護師さんのところへ行って、

「脳転移の可能性はないか?と先生に聞きたいのだけど、
父の前では先生に聞けない。どうやって伝えるのがいいでしょう?」

と相談していたのだ。

それに対して訪問看護師さんが

「じゃあわたしから〇〇先生担当の外来看護師のほうへ伝えてあげましょう」

と言ってくださり、外来の看護師さんのところへわざわざ足を運んで、

父にわからないところでこっそり伝えてくれる・・・

という、そんな面倒を引き受けてもらっていた。

 

それからほんの数日でまた訪問看護師さんのところへ足を運ぶというのが

なんだかものすごく厚かましいことのようで、ためらわれた。

 

でも、ほかに相談する相手が思い浮かばなかった。

 

緊張しながら、訪問看護ステーションへ行く。

中に入るとお昼ということもあって、数人の訪問看護師さんたちが集まっていた。

ちょうど、前日に父を訪問してくれた看護師さんがいて、

その人が対応してくれたので、今日の状態を説明する。

 

「・・・という状態で、心配でたまらないんですが、
でもボーっとして身体が弱っているというだけなので熱とかあるわけじゃないし、
そんな理由で受診させてもいいものなのか・・・
どういう状態になったら受診をさせたほうがいいんでしょうか?」

 

と、自分の不安をそのまま伝えると、

 

「いやいや、それはもう今日にでも受診させたほうがいい状態だと思いますよ!

受診どころか、入院させたほうがいいかも。」

 

と、予想外の返事が返って来た。

 

「え?入院ですか?食べられなくて弱ってる、っていうだけで
入院させてもらえるんですか?」

 

とわたしが驚いて聞き返すと

傍にいた別の訪問看護師さんも会話に加わり、二人が口をそろえて

 

「全然いいよ~。とりあえず受診させて、”入院させてください”って頼んでいいよ!
ねえ?(隣の看護師さんに向かって)」

 

「そうそう!麻薬も使ってるんだし服薬管理できないのはまずいし、
とても一人にさせて置ける状態じゃないよ~。入院していいんだよ!」

 

と言ってくれた。

 

もうお昼で、外来の診察は原則終わっている時間だった。

じゃあこれからどういう手順で進めるか?ということになり、

訪問看護師さんが父の主治医に連絡をしてくれる・・・となったのだけど、

その主治医への電話がつながらないらしい。

 

そこへ主任さんが話に加わった。(実は月曜日の相談に応じてくれたのも主任さん)

事情を話すと

「直接外来に行きましょ!電話しているよりそのほうが早いでしょ?」

とすかさず言って、フットワーク軽くわたしを連れてすぐさま外来へ向かい、

月曜日のときと同じように

外来の看護師さんに事情を説明してくれて、入院前提で話が進むことになった。

 

訪問看護師さん達に相談したのが、あれよあれよと本人不在のまま

入院させる話になるとは、病院についたときには考えもしないことだった。

 

外来の待合室のベンチに座り、ふぅ~っと一息つくと

そんな気はなかったのに、思わず涙がこぼれた。

 

 

週末からずっと不安と闘っていて、

どうしようどうしようという気持ちでいっぱいで

「自分が面倒みなきゃ」という重圧でどうにかなりそうだった。

今からこんなことでどうするんだ!と自分に言い聞かせつつも・・・。

 

誰かに話を聞いてもらいたいたかった。

助けてもらいたかった。

それを、訪問看護師さん達から「病院に任せていいんだよ」と言ってもらい

救われた気持ちになったこと。

すぐにテキパキと動いてくれた彼女たちの存在。

 

ありがたくてうれしくて

 

それは安堵感からの涙だったと思う。

 

(つづきます)