緩和ケアのための入院。

入院翌日、思った以上に急速に父が回復したように見えて、

主治医との面談時になんだかちょっと気まずい思いをしたわたし。

入院当日から翌日にかけての父の回復具合を10歩前進・・・!とすると、

 

実は面談の翌日(入院3日目)に父を訪ねた時の体調は、

「5マス戻る」くらいな状態に下降していた(汗)

 

頭のほうはかろうじて見識障害のような症状はなかったものの

言葉は非常にゆっくりで、力がない。

全体にぐったりとして、ボーっと眠たそうな顔で話す感じ。

 

聞けば、早朝に背中の痛みが激しくなり頓服を飲みたいと頼んだと言う。

その後に朝夕2回のベースの痛み止めも服用しているので・・・

やはり「頓服+ベースの薬」を短時間に服用すると、こうやって

倦怠感&傾眠傾向の症状が出るんだな・・・と思った。

 

けれど、そんなふうに弱々しい状態の中で、父は言った。

 

「家に帰りたい」

 

と。

 

病気の家族から、一番言われてつらいのがこの言葉だ。

 

 

てっきり治療は何もされていないと思っていたけれど

この日は栄養補助のための点滴が施されていた。

「足元がふらつくので転倒の危険あり」と判断されているため

父のベッドの足元にはセンサーマットも敷かれている。

(だからトイレにも勝手には行けないため、ナースコールしなければいけない)

 

つまり、体力が落ちて歩行は弱々しく、栄養状態も十分ではない・・・

そして薬を飲みすぎると傾眠状態になってしまう・・・のが今の父の状態だ。

 

・・・こんな状態で家へ帰ったとしても

あの入院前の数日間の「何もしない・何もできない・ひたすら寝ているだけ」の

状態が繰り返されるだけである。

 

それ以前に、この状態で「明日退院します」と言ったら、きっと看護師さんから

「だ、大丈夫ですか?」と驚かれるであろう・・・そのくらい弱々しい。

 

「今、家に帰ってもまた1日中寝てるだけになるでしょ?

食事も摂らないでしょ?配食サービスやヘルパーさんがチャイムを鳴らしても、

玄関まで出ていくことすらできないのでは?」

 

と、父に言う。

 

「それでも・・・家で寝ているほうが、ここにいるより気が楽だし
なんだか体も良くなる気がするんだが、どうだろうか?」

 

と抵抗する。気が楽になるのは当然だし、もちろんその気持ちはわかる。

それに、今回は今までとは違って4人部屋への入院なので、

カーテンで仕切られた狭いスペースに閉じ込められている閉塞感も強いのだと思う。

わかるけど・・・・!

 

私「でも、ひとりでは何もできないでしょう?」

 

父「まあそうだけど・・・寝ていたらそのうち治るんじゃないかな。」

 

私「寝ているだけではもっと足腰が弱るよ?わたしが様子を見に行かないと食事もしないでしょ?薬もまた飲みすぎてしまうかもしれないでしょ?わたしも仕事があるから
お父さんのところへ毎日朝夕は通うのは大変なんだよ。(※仕事はウソです)
ここにいてくれたらきちんとお世話してもらえてわたしも心配しなくて済むし。
毎日リハビリもしてもらえるわけだし、
だからもう少し身体がシャキっとするまで我慢してほしい。」

 

「わたしだって毎日毎日は無理なんだよ」などという言い方は

本当ならすべきではないとわかっていたけれど、あえて言ってしまった。

 

やっかいなことに、父には入院前の数日間・・・自分が意識朦朧とした状態だった

時の記憶がほとんどない。

だから、朝夕にわたしが父の元に通っていたこともあまり覚えていないし、

食事のことや服薬管理のことをわたしが必死に世話していたことも記憶がない。

つまり、わたしにいろいろ負担をかけたという記憶がないし、

わたしの通い介護では限界がきたから入院になった・・・とわかっていない。

そのため、「このまま帰宅してたらまた娘に迷惑をかける」という

意識も当然なかった。

だから「帰ったら帰ったでなんとかなる」だなんて言っているのだった。

 

 

ただ、父には「娘なんだから親の面倒を見て当然」という傲慢な考えはないと思う。

おそらく、わたしのことを「妻や母親」のように思っている感じなので、

全面的に甘えてるというか依存している・・・というのが正しいと思う。

「困ったことや自分のしたいことは、
自分にはできなくてもきっと娘が何か工夫してくれる、願いを叶えてくれる」

まるでスーパーウーマンのように思っているのは間違いない。

 

だから、父の「家に帰りたい」には、自分自身に対して「やっていけるだろうか?」と

問いかけたり、退院してからの自分の生活を想像するというプロセスは

最初から存在しておらず・・・

とりあえず帰りたい、で、帰ったあとの問題や大変なことはきっと娘が

なんとかしてくれるからなんとかなる・・・と、思いこんでいるのだ。

   

こういう父には、いつもいつも「それがお父さんのためだよ」という言葉では

説得できない場面も多く・・・・このときは言うべきじゃないかもと思ったけれど

「わたしだって大変なんだよ」というニュアンスのことを言ってしまった。

 

 

そしてそれは

いずれ来るであろう「緩和ケア病棟への入院」を見据えてのことだった。

 

今ですらこんなふうに「帰りたい、家にいたら良くなる」なんて言っている父が

この先、ひとり暮らしが難しくなってきたときに、

素直に緩和ケア病棟に入ることを了承するとは到底思えない。

でも、そうせざるを得ない日は必ずやってくる。

だから、少しずつでも・・・うっすらでも、

今から小出しにする感じで

「娘の協力なしでは自宅暮らしは成り立たない。
そして娘につきっきりの世話を頼めるわけじゃない。」

ということを、自覚して・・・覚悟していってもらわないと困ることになりそう

という気持ちがわたしの中にはある。

 

 

それでも父は「帰りたい」を繰り返す。

 

退院のタイミングは、結局はわたし次第のところがあるので・・・・

(主治医に許可をもらうような入院ではないし)

わたしが父の面倒を見るつもりであれば、いつでも連れて帰れる話だけど

残念ながら、わたしにはそこまでの覚悟はないし、

こんな不安定な父を支えきれない。

 

私「じゃあお父さん、仮に今すぐ退院するとして・・・。

病院の駐車場まで自分の足で歩いて行ける?

まさか駐車場まで車いすに乗って退院するつもりじゃないよね?

車椅子がないと駐車場にも行けないようでは、

家に帰ってからもどこへも行けないよ?」

 

と言ったら、父はさすがに苦笑いをして降参した。

ベッドの足元にセンサーが設置されるほどだから、歩行に力がないのはあきらかで

本人も、「トイレへ行くのが精いっぱい」と自分で認めている。

 

「家に帰りたい」の話は、ひとまずはこの会話で終了した。

 

 

けれど、この会話をしながら・・・・

わたしは前日の主治医との面談を思い出していて

ブログの中でも書いたような

「どこも悪いところがないのに入院させてもらって申し訳ない」

と思えてきた。

 

父は紛れもないステージⅣの肺がんで・・・

客観的に見ればそれだけで十分、重病の患者なわけで・・・

(しかもほかにも肺の病気を抱えているし)

「どこも悪くないのに入院させてもらっている」わけでは決してないのだ。

 

今の父の状況を冷静に考えると

麻薬による疼痛コントロールが必要な状態で

それが自宅ではうまく管理できずに結果的に身体を衰弱させてしまった、

だから弱ったその体調を整えるために一時的に入院させてもらっている

・・・ということになんだよね?と。

 

つまり、今の入院の状態こそが「緩和ケアのための入院」なんだと気が付いたわけ。

(一般病棟にいるのでなんとなく場違い感を感じているだけで、結局そういうこと)

 

主治医が「落ち着くまで入院しましょうか」と言ってくれたのは

父のことを「緩和ケアが必要な患者」というふうに見ているからなのだ、きっと。

(そしてそれは病棟の看護師さんたちも?)

緩和ケアって、痛みや苦痛を取り除くのはもちろんだけれど、

その過程で衰弱した身体をケアするために一時的に入院することもまた、

「緩和ケア」としては普通にあるはずのことで・・・

そこに後ろめたさを感じる必要はないのかも?と思えてきた。

 

 そういうふうに捉えることで、

入院に対するモヤっとした気持ち(後ろめたさみたいなもの)は解消されたけれど

 

 

それはそれとして・・・・

問題は「いつ退院」するか?

本当にこれは悩むことになりそう。

 

「車椅子なしで(駐車場までとは言わないにしろ)病院のロビーまで歩ける」

というレベルまで体力回復しないとダメなのでは?と思う一方で、

 

79歳・・・。

一度ガクンと落ち込んだ足腰の弱さが、

果たして数日で不安なく歩けるレベルになんてなるだろうか?

 

いや・・・どう考えてもならないと思う。

 

 

実は退院してからの介護サービスの見直しを考え中で・・・

担当の包括の方からは、入院したその日に電話がかかってきて

現状を話したときに、担当さんから

「介護認定の区分変更」を考えたほうがいいのでは?と勧められた。

 

これは介護認定の更新が来る前に心身の状態が悪化した場合に、

もっと介護度が上がるはず・・・ということで認定区分を再審査してもらうための

申請手続きのことだけど

今の父は明らかに「要支援2」の認定を受けた時よりも動けない状態にあるし、

再申請する場合、おそらく主治医が「肺がん」の所見を書類に書いてくれると思うので

最低でも「要介護1」になる可能性は高いかな・・・?と自分でも思う。

 

そのあたりのことも、いろいろ考えていて思うところあるのだけど、

ここにその話をつなげると、まただらだら長くなるのでそれはまた後日に。

 

まず頭の中で整理して、連休明けにソーシャルワーカーさんに相談などしてみてから

記事にします。

 

とりあえず、病院に行くたびに父から退院を急かされるので

そこをなだめるのに精いっぱいです・・・。