肺がんステージⅣ。

(つづきです)

 

主治医と二人だけでの面談は、そこからわたしが一番聞きたかった、

肺がんそのものの話へと進んだ。

 

まず、病状全体の話。

5月に撮影したレントゲン写真と、今回入院後に撮影した画像とでは

ガンの大きさに顕著な変化はないので、それほど状態は変わっていないはずとのこと。

もちろん、胸部レントゲンの検査しかしていないので、

他臓器への転移の可能性がないとは言えない。

わたしが心配していた脳転移も現状は「転移があるかわからない」状態。

でも、検査については

 

「たとえば脳転移についてはMRI検査で分かります。けれど、

検査で転移がわかったからといって、何かできるわけじゃなく・・・・

対処療法で苦痛を取り除いていくしかできることはないんですね。

そうなると、検査をする必要があるのか?と、思うのです。

そのときそのとき、出てきた症状に対処していくしかないので・・・。」

 

主治医が父の身体を検査する気がなさそうなのは、前から感じていたことだけれど

ああやっぱり、そういう理由なのか・・・と、わかった。

聞いてよかったと思う。「どうして検査してくれないんだろう」というモヤモヤを

感じなくてよくなったので。

「検査してもできることはない」というのは本当にそのとおりで・・・

結局、父ではなく、「わたしが知っておきたい」という、

自分の知りたい欲を満たすために検査してほしい・・・と、思っていた気がする。

 

治療しないのはもちろんのこと、余分な検査もしない、苦痛を取り除くのみ・・・

 

「検査をしない」という主治医の考えを聞いた時、

これがターミナルケア・・・

つまり、終末期医療ってこういうものなんだなと実感した。

ターミナルケアでは、治療をしないだけでなく

「不必要な検査はしない」のが原則らしいから。そういうことなのだ。

 

 

 

そして、主治医の説明は続く。

 

「骨転移ですが、肋骨の上部の骨にガンが巻きついているような状態です。
(レントゲンで肩の部分が真っ白)
骨転移が確認された時点で、ステージⅣという判定になるので、
〇〇さんは肺がんのステージⅣということになります。
ガンの種類は細胞診をしていないので確定できませんが、おそらく肺腺がん扁平上皮がんでしょう。もう一つ小細胞がんというのがあるんですが、これはものすごく進行が速く、それこそ半年くらいで命を落としたりするガンなので、それではないと思います。

ただ、ステージⅣが必ずしも末期がんということにはなりません。
本当の意味での末期がんは、全身状態の悪化、気管が圧迫されて呼吸苦が出る、
胸水が溜まる・・・など・・・の症状が出てきたときでしょうかね。
あとは他の臓器への転移によって、生命にかかわる症状が出てきたときなど。

 

ステージⅣか。やっぱりそうか。

ネットで調べた知識から、たぶんそうなんだろうなーと思っていたが

やっぱりそうだった。

ただ、突然のガン宣告というわけでもないので、

いたって落ち着いて先生の話は聞いていた。

 

「それから余命の話ですが・・・これは実際にはいわゆるドラマのように「あと何か月」とかって言うのは難しいんですね。統計的には、未治療で6か月~2年など、いろいろデータがあったりするんですが、ガンのタイプによっても違いますし、
当然個人差もあるので必ずしも当てはまらないです。


実際、〇〇さんは未治療で二年もこうして生活できているわけですしね。
骨に転移があるといっても、それ自体が命をおびやかすわけではありません。
今後としては・・・まあ2年はさすがに厳しいかな・・・と思いますが1年くらいは生きられる可能性は十分あるんじゃないでしょうか。」

 

 

わたしは画像を見ながらむしろ・・・

「1年も生きられるの?」と驚きだったけれど

(骨転移の範囲はわたしのこぶし大くらいに大きく見えたし)

でも、それはあと1年今の状態をキープして生活を続けられる・・・

という話では当然ないわけで

家で一人暮らしが続けられるのはやっぱり数か月・・・と

なってくるんじゃないだろうか。

 

最後に、これも先生に聞いてみたかったことを尋ねた。

それは訪問看護の話。

 

訪問看護って、どんなものかのイメージはできても、

じゃあどうやって利用するか?ということは、実際に利用経験がないと、

なかなかわかりづらい話だと思うので、

ここで簡単に説明すると・・・・

 

 

訪問看護も、普通の病院治療と同じで自己負担額1~3割なのだけど

そのためにつかう公的保険は2種類あって、

医療保険を使う

介護保険を使う

の2パターンがそれ。

じゃあどうやって使い分けされるのか・・・?というと、

要支援・要介護の認定を受けている人は必ず「介護保険」を使わないといけない・・

という規定になっている。

(そして医療保険介護認定を受けていないすべての年齢層が対象となる)

 

介護保険」の範囲内で満足のいく訪問看護を受ける・・・というのは

なかなか大変なこと。

それはご存知のとおり、「介護保険」というのには

介護度によって「使えるサービスの上限枠」が決まっているため。

 

介護サービスは、ヘルパーさんやデイサービス、ショートステイなどなど、

使いたいサービスを組み合わせて足し算して、枠内に収まるようにすることになる。

(ここの計算や計画を立ててくれるのがケアマネさん)

 

たとえば現在の父の場合だと、「要支援2」なので、使える枠がもともと少ない。

なのでその枠の中では、

現状の「ヘルパーさん週2回」「訪問看護1回」「通所リハ2回」

上限に達してしまう。

今の介護度で、それ以上の訪問看護を受けるには自費利用しかない。

 

けれどこの訪問看護、実は

厚生労働省が認定した特定疾患の患者」「末期がん患者」については

医療保険の対象となっている。

それの何がいいのか・・・というと、

つまり、介護認定を受けている人でも末期がんであれば、

訪問看護介護保険から切り離して、利用の上限枠などを気にする必要なく、

医療保険で週4日以上も使えることになるわけ。

(ここまで説明分かるかなあ・・・?)

 

父の体調は、今後ゆるやかな下り坂となるのは100%確実なので

いずれ訪問看護の回数を増やしたい。

(そして訪問看護&通い介護で限界が来るようなら緩和ケアへ入院かな・・・と)

そのためには、上限いっぱいの介護保険ではなく、

医療保険を使えるようにしたい。

 

けれど、ここで問題なのは

 

父は肺がんの確定診断を受けていない・・・・という点。

 

そこで主治医にこの話をざっくりして

 

「・・・ということで、末期がんだという認定であれば医療保険を使えるんですが、

でも父は確定診断を受けていないのでどうなるんだろう・・・?と。

末期になったときに、”末期がん”と診断してもらえるんでしょうか・・・?」

 

と、ちょっと踏み込んで質問をしてみたわけ。

 

主治医は少しきょとんとしていた。

どうも「末期がんなら医療保険訪問看護使えるんですけど」な

患者側の事情というか、公的保険の事情は知識として知らなかった様子(笑)

 

まあ、それは不思議ではないか・・・。そこは仕事じゃないもの。

 

けれど

 

「はあ・・・なるほど、そういうのがあるんですか。

そういう書類が必要であれば、今の時点でもそのように診断書を書きますよ。

治癒の見込みもないわけで、骨転移して、ステージⅣという画像から判断しても、

書類に末期がんという認定をすることになんら問題はないと思います。

必要であればサインをするので言って下さい。」

 

・・・・と言ってくれたのだ!!!

 

びっくりするくらい笑わない・・・感情を表に出さない先生なのだけど

意外とちゃんと話すと納得のいく説明をしてくれるし、

「せっかく入院したんだからまあゆっくり」なんて言ってくれるし(笑)

 

なんというか・・・わりと苦手なタイプでとっつきにくいのだけど、

思い切って相談してみてよかった。

 

これで介護保険を使って訪問看護を受けなくて済むようになるし、

必要に応じて回数も増やせることに・・・。

 

ほかにもいろいろ考えたり、見直さなければいけないことがある。

包括の担当者だったり、院内のソーシャルワーカーさんだったり

(昨年の肺炎時にめちゃくちゃお世話になった人)

今後、どういうサポート体制にしていくのがいいのか?

来週になったら相談しようと思う。

 

 自分が都合よく考えてるだけかもしれないけど

どうも・・・「ああもうダメだ」とピンチになると

わたしって、必ず誰かが救いの手を差し伸べてくれる構図になっている気がする。

 

わたしの通い介護を助けてくれる人たちはみんないい人ばかりだ。

病院スタッフも介護サービスの関係者も。

そしてブログにコメントを下さる方たちも!

父のことでは大変なことも多いけれど、

人との出会いに恵まれていることは、本当に幸せなことだと思う。

 

感謝しかない。

ありがとうございます。