そして修復。

父がわたしに暴言を吐いたのは、日曜日のことだった。

訪問看護師さんが家に来る日(月・水・金)は

わたしは父のところへ行かないことにしているので、月曜日は会わず。

火曜日にも、本当はまだ顔も見たくない気分だったが(笑)

洗濯物とゴミの回収に行かなければならないのと

朝食のパンが切れそうなことから行かないわけにはいかず・・・

運転中に何度もため息をつきながら、父の家へ向かった。

 

父の家へ着くと・・・父の態度が明らかにいつもとは違って挙動不審で

ちょっと笑いそうになってしまった。

あんな父は見たことがないかもしれない。

母親からカミナリを落とされた子供が、しばらくあとに

「おかあさん、まだ怒っているかなあ?」と、

まるでその母親の顔色を伺っているかのように、チラリチラリと話題を振ってみては

こちらの反応を伺っているようで、そんな姿が新鮮だった。

わたしがあんなふうに父に反撃したのは生まれて初めてのことだったし

それは当然父にとってもそうだったはわけで・・・

かなりの戸惑いだったと思う。

なんとか場を盛り上げようと思ってか?「稀勢の里は連敗でかわいそうだなぁ?」

などと、話題を振ってくるのだが

いつもだったらそこから父の大好きな相撲話を広げてやるのだけど

その日のわたしは「ああ、そうだね」と気のない返事をするだけで打ち切った。

 

当初、父から散歩中に暴言を吐かれたときにはショックのほうが強く

悲しい気持ちでいたのだけれど、

時間が経つにつれて「なんでわたしが怒鳴られなきゃいけないのよ?」と、

だんだんと怒りのほうが増してくるから不思議(笑)

 

この日はまだ、度量の小さいわたしのハラワタは煮えくり返ったままだったので、

父が振ってくる話題にもそっけなく答えるだけで、

ゴミと洗濯物の回収、買ってきたものを冷蔵庫に入れるなど、やるべきことをしたら、

10分ほど父のそばに座っていただけで

「じゃあわたし、もう行くから」と、とっとと帰ってきてしまった。

正直なところ、自分自身もまたどうしていいかわからなかったし。

簡単に許したくはないし、かといってブスっとした顔を続けるのもつらいのが本音だ。

  

翌水曜日。訪問看護師さんが来る日だったのでもちろん実家へは行かず。

父に腹を立てたり悲しんだりするだけでなく、自分の向き合い方も冷静になって

考え直さねば・・・と、1日じっくり考えた。

(・・・で、書いた結論が昨日の記事)

 

わたしの中で出た結論は昨日書いたとおりなのだけど、もっと具体的に言うと

実はマイルールを3つほど決めた。

 

①体調を聞くのをやめる

入院中からそうだったけれど、これまでは行くたび、顔を見るたびについ口癖のように

「体調はどう?」と聞いてしまっていたが、これはもう意識的にやめようと決めた。

ひとつには、わたしのよけいな体調確認のせいで父のグズグズとした不定愁訴

(頭が重い、体がだるい、夜眠れない・・・など)

をわざわざ思い出させてしまい(←そのくせ、病院行く?と聞けば拒絶する)

「あ~あ。聞かなきゃよかった」というゲンナリした気分になることと、

もうひとつには、今は訪問看護師さんが来てくれているのだから、

そこで体調チェックはしてもらっているし、本当に体調が悪ければ

それは訪問看護師さんに言うべきだと気づいたからだ。

(父はわたしには甘えからか?不定愁訴をよく口にするのに、

病院へ行くと”調子はいいです!”と意地を張って言ってしまう悪い癖が以前からある)

わたしが体調チェックをしてしまうことが、父の病人気分を助長しそうなので

今後はやめることにした。

 

②頼まれてたことにすぐ応じない

入院中からそうだったけれど、父から「〇〇を買ってきてほしい」と言われたりすると

ここでもついつい無理をして、本当はめんどくさいと思っているのに

「その日のうちに買ってこないとかわいそうかな?」という意識が働いてしまい、

父の要望に合わせすぎてしまい、ストレスの種を自ら作り出すことになっていると

気づいた。

必要な手助けはもちろんしてあげないといけないけれど

言えば何でもすぐにやってもらえる・・・と、父にアテにされすぎるのもよくない。

元気だったうちはそういうことも「たまに」だから対応できたけれど、

今後はもっとそういう場面が増えるはず。

なので、「〇〇買ってきて」と言われたら「今日は無理。いついつならいいけど」と

頼まれ事が緊急でない限りはわたしの都合を優先することにしようと思う。

些細なことだけど大事なことだと気づいた。

 

③リハビリはさせる

まだリハビリ型デイサービスに行かせることをあきらめてはいない(笑)

ただ、今は介護認定を待っている状態だから、正直いろいろと落ち着かないのも事実。

暫定的に父の担当になっているケアマネさんはいるので

一応すぐにでも相談して介護サービス利用の前倒しをすることは可能だけれど

父の場合は「要支援」になる可能性も高く・・・そうなると今のケアマネさんが

担当から外れて市の直轄支援事業所の人が担当になると聞いているので、

まずは体制がハッキリし、ケアマネさんが固定してから動きたいなという思いが強い。

リハビリに通う話はそれから落ち着いて考えたらいいかなと思っている感じ。

(たぶん約2週間後には判明しているはず)

リハビリに通わせるのは、もちろん足腰を衰えさせないためでもあるけれど

同時に

「娘の言うことも聞きなさい」

「元気になりたかったら少しくらいイヤなことも我慢しなさい」

という「お母さん的」な力関係をじわりじわりと構築していくぞというわたしの

ひそかなもくろみも実はある(笑)

 

 

そんなこんなで昨日、木曜日。

いつまでも冷たい態度をとるのも、これも大人げないし、父も落ち込んでいるだろうし

昨日はもう、何事もなかったかのような顔をして父を訪ねた。

父のために買ってきた食料品を冷蔵庫に入れながら(朝食用やおやつなど)

あれこれとたわいのない話題をふると、

父はなんだかホっとしたように、うれしそうにそれに応えた。

 

そして、まだ満足に散歩もできない父に対して

 

「ほらほら。座っててもできる体操の動画を見つけてきたから一緒にやるよっ!

そんなところで1日ゴロゴロしていたって、体力は戻らないよ!」

 

とチクリと毒を吐きながら、父をソファから立たせると、ダイニングチェアを運んで

この体操(↓)をさせた。

 

「お父さんはこういう地道な努力をバカにするのは知ってるけどね、

わたしが来たときだけでもやりなさい!(ピシャリ)」

 

と、冗談ぽく言うと、父は苦笑いをして「ハイハイ」と素直にイスに座った。 

 


座って行う足元気体操

 

自尊心の高い父ひとりにこういう老人体操をやらせるのではなく、

私も横に座って一緒にやるところが意外と重要。

もちろん、これは健常で若い人がやるには、あくびがでるような体操である。

けれど、横で父を見ていると、この体操ですら結構必死な感じで

フーフー言いながらやっていたので、レベル的にはちょうどいいのだと思う。

今のところわたしが父を訪ねるのは週3日なので、たった週3日やるだけでは

何の効果もないかもしれないけれど、

(本当は毎日自発的にやってほしいけど、それは絶対やらないだろう)

何もしないよりはマシ!と割り切って当分これを続けさせようと思っている。

ちなみにこれの「立ってやるバージョン」もあるので、とりあえず目標はそこ。

(立ってやる体操のほうが当然体力が要るからね)

 

この体操を終えた後、父は「今日は散歩に行ってみるよ」と言った。

果たして本当に一人で外へ出たのか?確認していないのでわからないが

(やっぱり出るのが億劫で止めてしまった可能性は高いので過度の期待は禁物)

その意欲が大事。

体力回復もそうだけれど

在宅酸素と一緒に外で出るのは恥ずかしい・・・という心の殻を破るのは

父自身にしかできないことだから。

 

 

がんばれ お父さん。