甘い思い込みの結果。

前記事に書いたとおり・・・

緩和ケア病棟に移ってから、突如として父が徘徊を始めてしまったため

看護師さんからのお願いをうけて、わたしは毎日午後5~9時、

そして土日祝日にはそれに加えて朝7~9時も・・・・

父の病室へと通わなくてはならなくなった。

 

今まさに三連休の真っただ中にあって

思った以上に体力と時間を吸い取られているけれど

何とか頑張っている。

 

個人差はあると思うけれど、疲労度を左右するのって

メンタルがどのくらいやられているか?が大きい気がする。

もちろん、体力がメンタルを奪うということはあるかもしれないけれど。

 

わたしの場合は圧倒的にメンタルが削られるか否かが自分の疲労度に影響する。

 

毎晩9時まで4時間・・・病室で過ごすのは

確かに最初は「うげー」という感じだった。

けれど、実際に通い始めてみると

父が自宅にいるときと比べたら精神的にはずっとずっと楽なことに気が付いた。

 

何を食べさせたらいいんだろう?と食事のことを考えなくてもいい。

服薬管理は看護師さんがやってくれる。

トイレの介助は看護師さんがやってくれる。

体調に不安な点があれば、看護師さんが来てくれる。

そして、わたしが家にいる間も誰かが見回ってくれる場所にいる。

 

・・・と、父の体調を含めてわたしは何一つ気を回したり、不安がったり

どうしようか?と考えたりしなくていいのだから。

 

ただ、同じ病室で父が徘徊しないように

見守っていたらいいだけで

自分で何かを判断する必要がないのは本当に気持ちの負担が全然違う。

 

そして・・・もうひとつには

父がせん妄状態から相変わらず抜け出せないことが

わたしには返って楽だった。

 

普段であれば気難しい父である。

正直、毎日顔を突き合わせて話せる話題は多くない。

そして、頭がクリアであれば

早く退院したいということを、毎日訴えられるだろう・・・。

その「頭が正常な」状態の父との会話は、苦痛だったと思う。

 

 

入院してからの父は眠っている時間が増えた。

そして、起きるたびに記憶がリセットされて

何かの妄想が始まっているので、話を合わせてあげているだけでいい。

 

それから、広い広い有料個室にしておいたことも

結果的にとてもよかった。

これが狭い個室だったら、

父が眠っている間、

ずっとベッドの脇に父の顔を見ていなければならなかっただろう。

 

広い間取りのおかげで、

離れたところにあるソファセットでテレビを見たり、

スマホをいじったり、そして趣味の英語の勉強して過ごしている。

時間の拘束はあるものの、気楽なものである。

 

いや、気楽でいられた。

ほんの2日間だけ。

 

実は、見守りを始めた3日目の夕方のことだった。

午後5時近くに病室へやってくると

何やら病室内のベッドの配置が大きく変わっていた。

一体何があったのわからなかったが、

すぐに看護師さんがやってきた。

 

その日の朝、父が室内で転倒したという。

ひとりきりでいたときなので、どう転んだかさっぱりわからないが

トイレの前で、ズボンを半分下げた状態で倒れていたという。

足の付け根の痛みを訴えて、車椅子でないとトイレへ行けなくなってしまったらしい。

すぐに主治医を呼んで足を動かしたり状態をチェックしたが

見た限りでは骨折の心配はなさそうとのこと。

念のためにレントゲン検査をすることを勧めたが、

父が頑なに拒否したので検査は受けないまま。

わたしも検査するように言ったが、やはり首を横に振るので無理強いはできなかった。

 

「ベッドから降りるたびにセンサーマットが鳴ってもご迷惑なので

マットは病室の出入り口に置いてもらって結構です」

 

とわたしが同意した話なので、看護師さん達に責任はない。

責任はあくまでもそれを了承したわたし。

 

「徘徊」のことと同じように、

「転倒」についてもわたしは甘く考えてしまっていたことになる。

 

そんなこと、まあよっぽど起こりっこないだろうし・・・と。

 

徘徊時の父は、思った以上にスタスタと歩いていたので

(ただし10mも歩けないが)

徘徊できるほどの父が、転倒なんてするわけがないだろうと甘く考えていた。

まして、危険な状態になるほどの転倒になるかもしれないことも想定していなかった。

 

すべてわたしが甘く考えていた結果。

 

 

そして・・・

実はこの転倒以降、父の全身状態が急激に変化してしまっていて

今、非常に戸惑っている。

ほんの数日前まで「徘徊が・・・」なんて言っていた父が

その転倒をきっかけに、

自分でベッドから降りることもできなくなってしまったのだから。

 

いったい・・・父の体の中で何が起こっているのか?

理由を知りたくて、

ざわざわと胸騒ぎがしている。