母ごころ。

今年の4月から社会人となり、遠方の企業に就職した息子。

いわゆる希望していた研究開発の部署に配属されて、

本人いわく「大学のラボの延長みたいな仕事している」とらしいが

ありがたいことに、上司も先輩もいい人ばかりで

少なくとも職場環境は良好らしい。

いまどきは新卒で夢を抱いて就職したものの、

ブラックだの、パワハラだの・・・で

若者が早々に転職を考えるのも珍しくない時代なので

「環境がいい」と言えるのは、本当にそれだけで親はどれだけ安堵することか。

 

そんな息子、10月に2週間の北海道出張があった。

配属されてから初めて、あるプロジェクトチームのメンバーに入れてもらい

出張はその成果発表の場になると聞いていた。

8~9月はプロジェクトの準備のために、残業も多く

忙しい日々を送っていることもLINEで聞かされて知っていた。

 

その一方で、父の病状は悪化していっていたわけで・・・

今だから言えることだけど、

わたしは内心、その息子の出張と父の葬儀が重なったらどうしよう?と

とても心配していた。

まあそのくらい、10月に入ってからの父の状態は悪かったわけだけど・・・。

 

会社で仕事をしている時であれば、迷わず息子も呼び寄せるつもりでいたが

「その時」が、息子にとって初めての大きな仕事となる

重要なプロジェクトのための出張中であったら・・・

親としては、水を差すようなことはしたくないという思いがあった。

通常業務と違って、おそらく息子にも重要な役割があっただろうし

息子が抜けることが上司やチームに迷惑をかけるかもしれないことを考えたら

息子自身、上司に言いにくいだろう。

しかも、飛行機でしか行き来できない遠方。

「すぐ帰ってきて」でチケットが取れるかもわからない。

葬儀のために、実家と出張先を往復させるようなことはさせたくない。

知らせてしまうと、仕事と葬儀のことで息子が板挟みになって困るかも?

・・・・などと、いろいろ考えると

わたしはもしもその期間中に父にもしものことがあっても

息子には知らせずにおくほうがいいのでは?と思った。

 

・・・と、その話を夫にしたところ、

 

「はあ?そういうわけにはいかないだろ?出張だろうと関係ないだろ。

孫が葬式に来ないなんて非常識だろ。」

 

と全力でわたしの思いを否定。

 

結果的に、息子の出張中には何事も起こらずに済んだので

よかったものの・・・

夫の頭は思っていた以上に、古臭くて堅くないか???

それともわたしが、過保護(というのかわからないけど)すぎるのか?

夫とのこのときの会話は、かなりモヤモヤの残るものだった。

 

 

 

そんなこともあったり・・・で、先週末のこと。

行きつけの美容院へ行ったわたし。

 

わたしの担当さんは、10年以上の付き合いのスタイリストさんで、

わたしだけでなく、息子も中学生のときから彼女に髪を切ってもらっているので

親子ぐるみのお付き合いといっていい人。

(息子はいまだに帰省のときには彼女に髪を切ってもらっているほど)

 

わたしの話も全部知り尽くしているので、父についても報告したのだけど

話の流れから、ふと・・・このときの「息子の出張と重なったら」の話を彼女にした。

すると・・・

 

「うんうん、わかりますよーー!めちゃくちゃ共感します。

わたしだとしても、息子がそういう状況だったら知らせないですよ~。

そりゃ、お葬式はもちろん大事だと思いますけど

息子の初めての大きな仕事の邪魔したくないですよー。

親ならともかく・・・祖父母の葬儀だったら・・・

そこまで何が何でも絶対出席!ってことはないと思いますー!」

 

と、二児の母である彼女は、前のめりに共感してくれた(笑)

 

 

こういうことは、考え方もそれぞれで

意見の分かれるところではあると思うけれど

とりあえず夫から「それは非常識」と言われたことが、

同じ母目線を持っている別の人からは

「わたしだとしてもそうする」と言われて、

 

あーよかった。

わたしの考え方はそこまで偏ってないってことだよね・・・と

 

1か月以上経った今になって、何やらホっと安堵した出来事だった。

 

 

ちなみに、息子はちゃんと葬儀には呼び寄せた。

もちろんそれは、出張中とかではなく

通常業務を休ませてもらうだけで済む状況だったからだ。

 

そして「もしあの出張中だったら・・・」の話を息子にもしたところ

 

「確かにあのときだったら、かなりヤバかったかも。

自分ひとりで任されているパートがかなりあったから

出張中に帰って来いと言われたら困ったかも・・・」

 

と言った。

どんなときも「仕事が最優先」とはもちろん思わないけれど

そう簡単にはいかないこともあるよね・・・。

 

亡くなった家族のことのことはもちろん大事だけれど

この先も生きていかなければならない家族にとって大事なことを優先することも

同じように大事だと思う。 

 

ま、わたしがいまなお過保護なだけかもしれないけれどネ。