肺炎の本当の恐ろしさを知る。

これまで、父が入院するたびに、入院中の出来事やわたしの愚痴、

父とのやりとり・・・・ほとんどすべてブログに書いてきました。

父と一緒に旅行に行った時のドタバタだったり、もちろん愚痴も。

だから、ここから先のこともちゃんと残そうと思います。

 

ただ、これから綴っていくことは、読んでいて気が滅入ることもある話になるかと

思います。でも自分の記憶として、記録として残しておきたいので淡々とつづります。

 

病気や入院の話とか陰気な話は好きじゃないわ、という方はどうかこの先は読まないで

くださいね。不快にさせてしまうかもしれないので。

 

 

 

 

 

10月12日午後3時半ごろ、父から「昨日から熱があって体がつらい」という旨の

LINEがはいり慌ててかかりつけ医へ連れて行く→即入院の診断・・・

というのが前回までの経緯。

 

翌日の10月13日。

朝一番で病室を訪ねると、何やら前日より装備が増えている。

腎臓の数値も悪化しているということで、尿カテーテルをされている状態だった。

導尿の意図をあまりよく理解していない父は、

何度も「おしっこがしたい。トイレに行く」と言う。

「おしっこは管から自然に出てるから行かなくてもいいんだよ」と私。

「でも漏らしそうだ」と父。

「大丈夫だよ。そんな気がするだけで絶対に漏れたりしないから。」と私。

「痛いから管を抜きたい」と、パジャマのズボンの中に手を入れるのを慌てて制する。

 

この「おしっこ行きたい」は、定期的に何度も訴えられて困った。

看護師さんも優しく説明してくれるのだけど、もよおしている状態が続くのが

ものすごくイヤみたい。ちなみにわたしも2回手術しているから導尿の経験は

あるけれど、痛みも異物感も全く感じなかったが。。。

看護師さんによると男性は体の構造上?女性に比べて異物感や残尿感を感じやすいのだ

そうだ。なるほど。

 

酸素マスクも、昨日はいつもの見慣れた酸素マスクだったのが、

今日はマスクの先にビニール袋が邪魔くさそうにぶら下がっているタイプのものに

変わっていた。(後から聞いたがそれは”リザーバーマスク”というものらしい)

今までの入院では、酸素濃度は指に挟むクリップ状のもので定期的に看護師さんが

測りに来ていたが、今回はベッド脇に常時数値を監視するモニターも備え付けられてい

た。その数値はナースステーションのほうにもつながっているので、

ナースステーションで常時、父の酸素数値を把握し、

一定以下になるとけたたましいアラームが鳴るしくみになっている様子。

 

それは、今までの肺炎入院のときには目にしなかった重装備の光景だった。

けれど、このときはまだ「これは1週間で退院・・・というわけにはいかないな」

という、また始まる病院通いに対する憂鬱な気持ちしか浮かばなかった。

 

2時間くらい父の話し相手になったあと、午前11時には病室を後にした。

これもいつものこと。

入院中、退屈をする父の話し相手になるために毎日病室へ行く。お茶を買ったり

洗濯ものを持ち帰ったり、おしゃべりをするための2時間。

わたしのほうに特に話したいことがあるわけでもなく、ただ父の話を

「ふんふん、へぇ~」とリアクション多めで聞いてあげるだけだ。

それは自分の「義務」みたいなもので・・・

いつもはそうやって適当に時間が経過して、適当に会話が途切れたところで

「じゃあまた明日来るね」と病室を後にしていたのだ。

 

ところが、この日は違った。

いったん家に戻ってからほんの3時間後のことだった。

病院から電話がかかってきたのだ。

何事かと思い、ドキドキしながら電話に出る。

すると、

「実は〇〇さんが、娘さんに来てほしいって言ってるんですけど」

と看護師さん。

状況の飲み込めない私は

何をわがままを言ってるんだ?と、看護師さんに電話をさせた父に対して軽くイラっと

した感情が湧き上がってしまった。

病院まで車で片道35分かかる。ちょっと混雑していると40分だ。

つまり往復で1時間以上。

ほんの2~3時間前に帰宅して、やれやれと休んでいたところへ「来てほしい」は

わたしをうんざりさせるには十分だった。

看護師さんは「〇〇さん、体が相当つらいみたいで少し不安になっているようで、

それで娘さんに来てほしいって言ってると思うんですね。」と言う。

これまた大げさな。だいたい自分で電話すればいいじゃないか、と

ここでもまだイラっとしていた。

 

まさか看護師さんに「行きません」とは言えないので、「すぐに行きます」と返事して

病院へとんぼ返りとなった。

 

しかし、その日2度目に訪れた病室の状況は午前中とは様変わりしていた。

父は本当にゼーゼーと苦しそうに息をして、私の顔を見るなり

「ああ、来てくれたか。うれしいよ。うれしいよ。お前が来てくれてうれしい。」

と何度も何度も言う。

午前中とはガラリと重症度の変わった父に戸惑っていると

そこへおそらく当直の女医さん(主治医ではない)がやってきて、

「娘さんですか?現在の状態と今後の治療についてお話をしたいのですが、

別室に来ていただいてよろしいですか?」と、わたしに言った。

こんなことも、これまでの入院中には1度もなかったことだ。

先生からの話は、いつも父と一緒に病室で聞いていたのに。

一瞬、ぞわっと何か冷たい空気を感じた気がした。

 

カンファレンスルームに通されて、父の検査データを見ながら、現在の状況についての

女医さんからの非常に分かりやすい説明。

「実はお父様ですが、娘さんがいったん帰宅されたあとに肺炎が急激に悪化し

熱が39.4度まで上がったため、酸素量を15Lまで引き上げました。

現在のあのリザーバーマスクで供給できる酸素量は15LがMAXなんですね。

これで状態が改善されればいいのですが、もしも15Lでも酸素状態を保つことが

難しいという場合は、人工呼吸器をつけるかどうかという選択になります。

それは、端的に言ってしまいますが、延命治療をどこまでするかという話になります。

ご家族のご意向を前もって聞いておきたいのですが。」

 

延命治療????

 

一瞬、頭の整理が追い付かなかった。

ちょっと風邪をこじらせて、ちょっと熱が出て、そのせいでもともと悪かった肺に

負担がかかっていつものように肺炎になってしまっただけ・・・

そして、それは入院治療を受けたら1日、また1日と確実に良くなっていくはずのもの

だった。でも、今回はそうじゃないというのか・・・?

そんなふうに今回の入院も「今までと同じ」と、軽く考えていたわたしにとって、

それは後頭部を何かものすごく重いもので勢いよく殴られたかのような感覚だった。

 

そして、このときようやく父が「娘に来てほしいと電話してくれ」と

看護師さんに頼んだ意味がわかった。39度を超える熱で自分で電話できるような

状態ではなかったこと。おそらく自分でも経験したことがないくらいに本当に

息苦しくつらい状態になっていたであろうこと。怖かったんだろうと。

 

「現在のお父様の病状は、改善するかこのまま治らず命を落とすか、五分五分の状態

で、どちらへ転ぶか全くわからないという状況です。

肺炎を治療するための抗生剤は少し効果が出ている状態ですが、お父様の場合は

もともと肺気腫間質性肺炎という持病があり、肺自体がすでにボロボロの状態です。

そのため、肺炎が改善されれば肺の機能まで確実に戻るといえる状態ではなく、

現時点では何とも言えません。言えることは、ここからさらに悪化した場合は

人工呼吸器を使わないと生命を維持できないという状況になるということです。

ですので、できるだけ早めに・・・できれば今日明日中にも、ご家族で相談されて

どこまでの延命治療を行うか話し合って決めていただけませんか。」

 

という女医さんからの話。

聞いた話を簡潔にまとめて書いているので、少し冷たいような印象に聞こえるかも

しれないが、実際には十分に丁寧で、言葉を選んでくれるわかりやすい説明だった。

 

人工呼吸器については、わたしは漠然とした理解しか持っていなかった。

女医さんからの説明と、その後自分でスマホで再度調べてようやく理解したが

 

*人工呼吸器は1度挿管したら、自発呼吸が戻るか(回復するか)亡くなるまで絶対に外すことができない。(やってもらったものの、辛そうでかわいそうだからやめてあげて、というのは無理)

*人工呼吸器を挿管した場合、大抵の場合は2週間くらいで気管切開に移行する。 (人工呼吸器挿管を選択した時点で、気管切開への移行は拒絶できない)

*そこまで至った状態から回復する可能性はあまり高くはない。

*そして人によっては何週間・何か月と長期で生きながらえる場合があるが、それはいわゆる「植物状態」と同じであり、呼吸によって生かされているだけの状態であるため、必ずしも本人と家族にとって幸せなことか?の判断はとても難しい。

 

わたしはあまりに急激な状況の変化に頭のほうがついていかなかったせいか

何度も何度も「延命」という言葉がでてきても

このとき、驚くほど冷静に女医さんと会話していた。

涙がこみあげるようなことも一切なかった。

そして、

「ハッキリ言っていただいて構わないのですが、命に関わる状況ということなのでしょうか?ほかにも兄弟がいるのですが、呼んだほうがいいということでしょうか?」

と、冷静に聞くと、女医さんは

 

「そうですね。非常に厳しい状況といっていいと思います。

会わせたい方がいらしたら、呼んであげたほうがいいかもしれません。」

 

と、答えてくれた。

 

女医さんからの説明が終わった後、兄と弟に現状をLINEで知らせた・・・。

 

(つづく)

 

(お断り:医療的な話はあくまで父のケースであり、またわたしの理解を的確に文章にできていない可能性もあります)