旅行のはなし。

昨日の記事へのアクセスがすごいことになってて、ちょっとビビってますが

いろいろとお騒がせして申し訳ありませんでした。

もうピリピリした記事はいいので、話のつづきを~・・・と

思われている人も多いでしょうから、通常通りのブログに戻ります。

(すみません、コメントへのお返事も順次かならず・・・!)

 

さて、月曜日の出来事にさかのぼります。

どうやって書こうかなあ・・・と思いましたが、何度も書いているように

この日はいろいろあったので・・・それらのポイントをピックアップしていると

たぶん時系列がわかりづらくなりそうなので、

朝からの出来事を、丁寧にドキュメントで書こうと思います。 

 

 

 

*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~

 

毎月の定期検診の予約はいつも午前9時。

診察の前に血液検査やレントゲンを済ませなければいけないため、

病院までの移動時間などを逆算して、

いつも午前8時には父の家を出る。(よってわたしは7時半に自分の自宅を出る)

 

この日も、いつもどおり朝8時に父を迎えにきたのだけれど

父はなんと、まだパジャマ姿でのんびりとソファに座っていた。

が、わたしが来たことに気が付くと

「あ!」と慌てたように、立ち上がった。

 

うちの父親は、とりあえず認知能力には問題がない・・・・はずである。

けれどこういうことがあると、いちいち内心ヒヤっとしてしまう。

 

幸いなことに、父は病院の予約があること自体は、忘れてはいなかった。

ただ、

「9時だ9時だと思い込んでた。9時じゃなかったか?」

と焦ったように言い訳をした。

 

これが老親でなければ、なんてことのない会話なのだろう。

けれど、もうすぐ80歳になろうという親がこの調子だと

つい反射的に「認知症キタか?」と疑ってしまう。

 

しかも、「9時に診察だから、8時には家を出ないと」と

いつもわたしに言っていたのは父のほうである。

それを「9時だと思ってた」というのは、これまでの父を考えるとありえないことで

わたしの胸は少しザワザワした。

 

 

 家を出る時間を間違えていた父の身支度に手間取ったため、

病院へ着いたのは8時30分。

週末明けの総合病院は患者さんでごった返す。

これは採血とレントゲンは、診察予約には間に合わないな・・・と確定した。

 

父の採血の順番を待っているときに、兄弟と一緒に行く旅行の話をした。

わたしは、この「兄弟と父と3人での一泊旅行」が決まったときに、

実はうっすらと嫌な予感を感じていた。

 

それは、父の病気とはまったく関係のないこと。

 

そして次の瞬間、わたしが危惧していた嫌な予感がまさに的中した。

 

 

父「旅行はお前も行くんだろ?」

 

 

これこれ、この言葉だったのだ。

わたしの中にあったかすかな不安は。

 

ここが一番不安だった。

兄弟2人がいくのなら、しかも車で行くんだし(何人乗っても交通費変わらないし)

お前も当然来るんだろ?いや、来たらいいじゃないか?どうして来ないんだ?

と、父が考えるのは至極自然な流れで・・・・・・。

 

でも、

 

 

お父さんごめん。
わたしは行きたくないんだ・・・。

 

 

と、心の中で叫んだ。

 

介護者になっている人だったら、きっとわかってもらえるはず。

気分はまさに「お泊りデイサービスに送り出す」みたいなもの。

 

わたしの場合は通い介護なので、同居でお世話している人に比べたら

何十倍も楽なはず。

なので、こんなことで愚痴をこぼすとまた誰かに怒られてしまいそうだけど

普段、あまりに父と接しすぎて、

いい顔をつくり、イヤなことをされても言われても我慢して、

要望にできるだけ応えて・・・という生活だから

父のことをしばし兄弟に任せて父のことを考えなくていい時間を作り、

自分のことだけに集中してリラックスする時間を作りたいと思ってしまう。

(わかる人にはわかってもらえるはず。届いて~・・・!)

 

わたしにとって、兄弟に父を連れ出してもらうということは

その間自分は責任から解放されて束の間ホっとできる貴重な時間でもある。

そして親は親で旅行を楽しめて、

お互いWin Winじゃないか!

 

・・・となるはずのことなので・・・・

 

父には本当に悪いとは思うけれど、

わたしが今回の旅行に一緒に行くだなんてことは、

もうこういう通い介護の生活が始まった以上は・・・・

少なくともわたしの感覚の中ではちょっとキャパを超えることになってしまっている。

「日常のお世話はわたし」「旅行(お楽しみ)は兄弟担当」

そうやって、兄弟間でも話し合ったことだ。

 

そんなわけで、「お前も旅行に行くんだろ?」と聞かれたわたしは

うろたえた本音を隠して 

 

私「ううん(ぶんぶん首を振って)まさか!わたしは行かないよ。」

 

と、できるだけあっけらかんと、明るい感じでスルーしてみた。

そこで「どうして?」とツッコまれたら、

なんと返したらいいのだろう?と悩んだが

幸いなことに、それ以上父は追及してこなかった。

 

ただ・・・これはわたしの気のせいではないと思うのだけど

どうも父のテンションが低いのだ。

 

過去にわたしが旅行に連れて行ったときには

必ず旅行の何週間も前から、

「楽しみだなぁ~楽しみだなあ~あそこも行きたいな、ここも行きたいな」

と、わたしに行き先や立ち寄りたい先のリクエストを後から後から飛ばしては

わたしを困らせ、

顔を見るたびに嬉しそうに旅行の話を自分から振ってきていたのに

兄弟との今回の旅行については、なぜか自分からは話題にしようとしないのだ。

 

ちなみに、行先はブログには書けないのだけれど(申し訳ないです)

行き先は父が3か月ほど前の担当者会議の席で「行きたい」と言っていた場所である。

わたしがそれを聞き

「お父さん、〇〇に行きたいって言ってるんだよ。連れていける?」

と兄にLINEで伝えたことから、

じゃあそこに連れて行ってやろう・・・となった場所なので

旅行の目的地も、もともと父が行きたがっていた場所のはずなのだ。

 

行きたがっていたはずなのに、どうもワクワクして見えない。

あきらかに過去の旅行前のテンションからかけ離れている。

うーん・・・これは体力的にあまり自信がないせいかなぁ・・・

自分の体調が心配なのかなぁ・・・・・と、

父の様子を伺ったままに、数分間会話が途切れたあと

父がポツリと言った。

 

父「秋にな・・・」

 

私「うん。」

 

父「秋に、東京の上野の美術館に・・・」

 

私「うん。」

 

「秋に上野の美術館に行っただろ?」と、以前の旅行の話をするのかと思い

父の次の言葉を待っていると・・・・

 

 

父「また上野の美術館に行きたいんだが、
連れてってくれるか?」

 

 

といきなり思ってもみない方向から言葉が飛び出した。

 

私「エッ・・・(;゚Д゚)?!」

 

全く予期していなかった父の言葉に、すぐに反応できないわたし。

 

私「エッ・・・・?わ、わたし?お兄ちゃんじゃなくて?」

 

父「そう。お前に連れて行ってほしいんだ。」

 

私「あっ・・・・・えーっと・・・」

 

 

 

ま、まさかのご指名だった。

「お兄ちゃんじゃなくて?」というのは、兄が東京に住んでいるからである。

 

前述のとおり、兄弟間で「旅行はお兄ちゃんが担当してね」と話し合っているし

行き先が東京なら、なおのことわたしじゃなくても兄に頼むのは自然なこと。

2~3日兄のマンションに滞在してゆっくり美術館&博物館めぐりをすることだって

可能なのだ。(なんなら1週間くらい行ってくれてもいいのよ)

 

 だから「え?わたしなの?」と確認するかのように反射的に

父に聞き返してしまったわけだけど

考えて見れば、これまでだってわたしが父を東京まで連れて行っているので

「お前に連れて行ってほしい」と父が言うのもまた、

自然なことだったと言わざるを得ない。

 

 

そして苦し紛れにわたしの口から出た言葉は

 

「うーん。行けるかどうかわからない。最近あまり腰の調子がよくないから、
歩きっぱなしとかできる自信がなくて・・・」

 

 と、自分の腰を言い訳に答えを濁すものだった。

ちなみに、腰の話は半分は本当のこと。

これまでも、父の旅行の時には父の身体に負担をかけないように

毎回、父の荷物を全部わたしが持って歩いていたから、

その疲労度はとてつもないものだった。

どのくらい過酷だったか・・・・はちょうど1年前の旅行の記事に書いている。

  

norako-hideaway.hatenablog.com

 

今、旅行に行くとするなら今までの荷物にプラスして「予備の酸素ボンベ1本」

持ち歩く必要が出てくるわけで・・・

 

その大荷物に自分の腰が耐えられる自信はハッキリ言って全くない。

だから腰の話は言い訳ではなくて事実。

(父はわたしの腰のことを気遣ったことは一度もないので、理解できないと思う)

 

でもね・・・本当に気持ちがあったら・・・腰の負担とか荷物の問題とか

そんなことはなんとでも工夫するんだろうな・・・。

結局、

 

父と旅行には行きたくない。

 

が、本音なのだ。

そんな自分をすごく冷たい娘のように感じてしまう葛藤。

これが通い介護生活でなかったら、たまのことだから・・・と、なんとかしたと思う。

でも今は「隙あらば心身ともに休ませてください」な気持ちなのでもう無理。

この過去記事を今読み返してみても、どれだけ父に振り回されてたことか・・・(汗)

 

 ただ、同時に父の言葉を聞いて気づいてしまった。

 

父は、兄や弟と一緒に旅行に行っても、おそらくあまり楽しくはないのだ。

それは、兄や弟が

わたしのようには、父の機嫌をとったり会話を盛り上げようとしないから。

 

二人は実際のところ、わたし以上に父のことを苦手としていて遠ざけている。

(わたしの通い介護を積極的に助けようとしないのも、関心がないというより、
性格の難しい父と関わると必ずイヤな思いをさせられるので、それを避けているだけ)

 

そんな二人だから、父との会話でのテンションはいつも淡々としている。

間違っても、父の話に「へぇ~!」などと、

前のめりになったり(たとえ演技でも)大きく笑ったり、

相槌を打ったりなどは絶対にしない。

男だからそういうサービス精神がもともと少ないんだと思う・・・。

 

母親ならまだしも、やっぱり男って父親に対してそんなに優しくしないのよね・・・。

 

父が今回、兄弟に連れて行ってもらう旅行に対して、

どこかしらテンションが低いのも、「お前も行くんだろ?」とわたしに聞いたのも

 

おそらく、「あの二人と一緒に行ってもたいして楽しくない」という気持ちの

表れだったのかもしれない・・・・と気づいてしまった。

 

 その場が・・・・とても気まずい雰囲気になった。

 

そして不自然な沈黙が生まれてしまった。

 

あ~あ。わたしはバカだ。

「秋になったら」と言ってるのだから、今は軽く「いいよ!」と言って

父を喜ばせておけばよかったじゃん、なんでいきなり「無理かも」なんて

言ってしまったんだよ・・・。

 

・・・と、自己嫌悪すると同時に

わたしのほうは「父からたまには距離を置きたい」と思っているのに対して、

 

父はそんなことは全く思っていないこと、

旅行も息子たちよりも、娘と一緒に行きたいし、

わたしのことを「日頃疲れているだろう」とか「面倒をかけている」と察する気持ちは

ほとんど持ち合わせてないんだな・・・ということにも気づき

 

なんだか改めて、とてつもなく大きな重荷を背負わされた気分になってしまった。

 

(つづきます)